相国寺啼龍図

日本画を描く友人と相国寺に特別公開中の啼龍図を見に行った。400年前に描かれたものとは思えない鮮明な龍図。



発見だったのが、龍は胴体がコークスクリューのように捻じれるように回転して描かれているということ。単に蛇のようにトグロを巻くように飛んでいるのではなく、胴体を回転させながら弧を描くようにとてもダイナミックに飛んでいるわけだ。それに気づいてから一気に躍動感を感じられるようになった。


真下から見上げると、顔が細く歪んで見える。正面外から角度をつけて見上げた際にぼってりと見えないよう緻密に計算しているらしい。


一般的には龍の頭頂方向が絵の上方向になるわけだが、そういう意味でこの龍図は90度ずれている。なぜそうしたのだろう。


龍は強いと思われる動物の様々な部位を寄せ集めて創られた想像の産物らしい。足は虎、爪は鷹、腹は蛇、角は鹿。そこまでは良いとして、頭が駱駝、耳が牛、髭は鯰ってそれってどうなんだ。


当時の日本はアジアの辺境の一小国だったので龍の爪は中国に配慮して三本爪。


この龍図は天井に直接描かれている。ということは天井に手の届く高さに足場を組み、絵師は上を見上げながら描いたことになる。システィーナ礼拝堂を始め数々の天井画を描いたミケランジェロは腰痛に苦しめられたらしい。これを描いた狩野光信は大丈夫だっただろうか。


友人曰く、下絵無しに直径9mの絵を描くのは非常に困難であるとのこと。しかし足場を組んでしまうと下から見上げても足場に遮られて全体が俯瞰できなくなってしまう。どうやって全体のバランスをとりながら描いたのだろうか。至近距離からでもある程度見渡せるサイズの人物図の集合体であるシスティーナ礼拝堂と、9mの丸枠一杯に描かれた龍では事情が異なる。不思議だ。