御室成就山遍路


御室の仁和寺は御室桜という遅咲きの背丈の低い桜で有名な門跡寺院だが、その裏手の成就山の八十八箇所巡礼道はあまり知られていないようで足を運ぶ人は少ない。文政10(1827)年に仁和寺第二十九世門跡済仁法親王の願いから寺侍が四国八十八箇所霊場から土を持ち帰り、それを埋めてその上にお堂を建て、四国に行けない人も遍路ができるようにした。四国の1200kmの道程には遠く及ばないものの、標高236mの成就山に散在するお堂を願を掛けてまわると二時間から三時間はかかる道程となる。確かに遠来の観光客向けではないのだろう。京都に住んでいるからこそこんなところにも足を延ばすようになるのだろうが、そうしてみて一層、京都の文化集積の厚さに改めて感心する。




仁和寺境内に入る必要はなく、入山料も必要ない。仁和寺の脇の道から入っていくことができる。





お堂には弘法大師像と本尊が納められている。小さいながらも端正な聖観世音菩薩や十一面観音菩薩像が拝める。




とある願掛けをしに、マンゴーをお供にお堂を巡った。願を掛けなければ叶わないわけではないのだろうし、自分が助けになることなど殆どないのだけれども、気持ちの問題のようなものだ。家で漫然と過ごすよりは願を掛けながらマンゴーの気晴らしと自分の運動も兼ねられて良いだろう。










石段が並び参道が整備された個所もあれば雨に浚われてぬかるんだ土肌の個所もある。景色は変化に富んでおり、実際の時間以上に短く感じる。
















薬壷をもってらっしゃるのは薬師如来か。




本尊が様々であるようにお堂の形も同一ではなく、中には六角堂もある。






第五十番繁多寺の先からは京都を一望できる。眼下に仁和寺の伽藍、遠くに京都タワー。現代の建築物は色彩賑やかだが、19世紀の昔には瓦屋根が連なり全く異なる印象の光景だったのだろう。



























いつになく寒い春で、雨だけでなく雪すらも俄か降る不安定な日だったが陽射に汗ばむ心地よい道中となった。





仏陀は青い髪をしており、頭頂が瘤のように盛り上がっていたそうな。青い髪というのはなんとも人間離れしすぎていやしないかね。





お堂の間隔は平均して数十メートルほどしかないとてもささやかな八十八箇所霊場巡りなのだけれども、八十八ものお堂を作り、かつ修復維持するのは並々ならぬ苦労だと思われる。年代は様々だが、山内の風雨にさらされても大丈夫なように小さいながらも頑健に普請されている。まだ信仰の厚い時代だから勧進できたのか、往時は寺に財力があったのか。








これをもって第八十八番結願寺。待ち遠しい。