代償を払わされるのは国民

最近の中韓との領土問題の報道には腹に据えかねる気持にもなるが、きな臭さも感じる。


現韓国大統領はそもそも日韓の更なる経済共同歩調を掲げた日本生まれの大統領だった。それが身内の汚職や失政を挽回するかのように戦後の補償問題と絡めて領土問題を今更ながら持ち上げてきた。この大統領は任期を残りわずかにし、このままでは史上最悪の大統領として評価を固めると目されており、さらに既に親族が汚職で逮捕されているところを見ると過去の大統領の例にもれず任期後は逮捕されそうな気配。内の目を逸らす為に外に仮想敵国を作り上げるというのはあまりにも猿芝居のようだが、実際には彼に向けられていた失政への批判は日本への怒りへ擦りかえられ強硬な大統領は頼もしい愛国者に演じ変わろうとしているのだから実に効果的らしい。対する泥鰌総理大臣も同様に「毅然とした態度」で「報復措置を可能な限り準備」しようとしてこれまた失政続きの中で「リーダーシップ」を発揮して失地回復を図ろうとしている。


先の大戦では若者や学生の多くが自分の命を諦めなければならなかった。戦後も多くの市井の人々が貧困や差別に苦しんだ。そして政治家や軍部への怨叉の声をぶつけた。内地から現状を無視した論理破綻した戦略戦術を命令し続けた軍部。ソ連参戦の情報ももみ消し、原爆投下まで被害を拡大させたとの歴史認識が固まっている。あるいは戦争回避の努力を放棄し保身や組織保持の為に開戦へ同調していった政治家達。しかし忘れてはいけないのは国民は完全な純粋無垢な犠牲者ではなく、開戦への世論を形成し軍部や政治家を後押ししたということ。いかに政治家が政治生命維持や実績作りのために日中韓問題を利用しようとしても、世論の支持なくしては成り立たない。自尊心を煽ればすぐ脳味噌が沸騰する「愛国心」に満ちた短気な私達。それを見透かされ利用されているのではないか。戦争になった際に犠牲を払わされるのは自分達だということを努々忘れるべきではない。


あんなちっぽけな島から得られる利益などたかが知れている。商業ベースで採掘できる資源が既にあるわけではない。日韓の経済貿易効果を大いに損ねてまでして白黒つけるべき、存亡に不可欠な資源があるわけでもない。漁業権や水産資源などは軽視できないが、日韓戦争へ発展するリスクを冒す価値はないだろうに。客観的に考えれば東電の不始末で失った東北地方の漁業資源のほうが遙かに大きい。最終的に一国民としての「自分の命や自由」と「尖閣諸島竹島から得られる便益」の二者択一を求められたらどちらを選ぶか。これは話にならない。比較対象として成立すらしない二者の選択も愛国心という短絡思考が挟まるだけで目が曇る。


どうせ李明博大統領が失脚すれば反日は収束する。とりあえずは李明博の任期満了までのらりくらりと只管遅延すべきだ。一切、進展させないようにすべきだ。わかり易いほどに与党は弱腰と非難されることを恐れているように見受けるが、国益のためにのらりくらりとかわす目的と意図を明確に主張したらいい。なんなら、失政と低支持率から目を逸らすために両国の関係を損ねる行動を取っていると韓国政府を直接的に非難できないものか。そして私達も阿呆な勇ましさを誇示したがる政治家を軽んじ、おそらく地味であろう老獪で深慮な政治家を支持する忍耐力を持たないといけない。


石の上にも三年、辛抱の図