橘商店


鰰の一夜干し十匹で千二百円。



エテガレイ五枚で一串、千二百円。それにしても鰈の口先は雛鳥のような風貌。



頭矮蟹の雌である勢子蟹が一杯三百円。津居山などのタグが付いた頭矮蟹は四、五千円以上。


魚介類はどれも鮮度が良く美味い上に、唸るほどの安さ。しかしもう一つの楽しみはこの店で買う蜜柑や梨。なぜ鮮魚店においてある果物がこんなに美味いのか、という疑問はあるが。



大型バスが何台も泊まる水産土産物屋があちこちにあるが、橘商店には個人商店ならではの魅力もある。店員は家族が中心で、雇用人ではないからこそ、そして店が小さいからこそ、看板を背負っている信用力があるように思う。店員として働く母親の目の届く店内に幼児を囲う柵が置いてあったりする。なんだか、自分の家の食卓に出す食材そのものを売っているような気がする。近くの大きな水産物店に行ったわけではないので本来比較などできないのだが、期待以上に美味しい海産物と果物を売り続けてくれる限り橘商店を贔屓にしようかと思う。



奇形のような異形が正常な姿の鰈。どんな進化で成長する過程で目玉が右半身に移動するようになったのか。やはりなるほど自然淘汰と環境適合だけでは説明がつかない。


生体丸ごとの姿は個性的で美しくて。。。スーパーで切り身になるとどんな魚だったのかわからない。気軽に近くで観察したり写真を撮ったりもできない。こじんまりとした魚屋ならではの楽しみ方。


終生、個人商店を大事にする客でありたいと思ふ。