オリバースコット監督によるアレクサンダー大王の生涯を描いた歴史大作。。。と呼んでいいのかどうかわからない。
アレクサンダー大王の側近にして大王の死後に後継者争いを起こしてエジプトを占有したプトレマイオスが追想する形で物語が描かれるのだが、プトレマイオスの書斎にでっぷりと丸っこい仏像が卓上に置かれていてそれが気になった。アレクサンダーの死後にあの特徴の仏像が果たしてあったのだろうか。歴史考察に疑問。
アレクサンダーが遥かインドまで征服したことにより、ギリシャ彫刻が持ち込まれインドの仏教を刺激して偶像崇拝であるにも拘らず仏像が造られるようになった。しかしあのころは所謂、ガンダーラに見られる彫りの深い西欧風な顔立ちの釈迦像の時代ではなかったか。鎌倉大仏のようなぼってりとした仏像はなかったように思う。アレクサンダーの死後40年という設定なので仏像が盛んに作られるようになり、それがさらに遠くエジプトにいるプトレマイオスの手元まで届いたかすら疑わしい。
ダレイオス三世が率いる20万とも30万とも伝わるペルシャの軍勢をガウガメラの戦いで破るシーンが描かれるが、その開戦直前で兵を前に鼓舞するアレクサンダー大王のシーンが映画「ブレイブハート」を彷彿させるというかあまりに模倣していて興醒め。「自由の為に」などとセリフまで真似るが、イングランドからの独立を計るスコットランドの例と異なり、アレクサンダーの場合はエジプトを制圧した後の領土拡大であって言葉がなんとも浮いてしまっている。劣化コピーのような悪夢だ。
最初から最後までアレクサンダー大王の男色が描かれていて男同士で「愛しているのは君だけだ」とやられるから正直、観ていてしんどい。同性愛者を差別する気はないが、映画作中で同性愛を見せられてもエンターテインされない。
コリン・ファレル、アンソニー・ホプキンス、アンジェリーナ・ジョリー、ヴァル・キルマーと豪華な俳優を揃えた割に壮大さも感動もしない映画だった。おいおい、本当にオリバーストーンが監督したのか、というのが率直の感想。自らベトナム戦争に従軍し、「プラトゥーン」と「7月4日に生まれて」でアカデミー賞を獲得したあの頃の作品のような世に問うテーマ性は微塵もない。そういえば、「ナチュラルボーンキラー」以降の記憶に残るような作品を知らないことに気づいた。
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