関東から両親が桜見物を兼ねて孫に会いに来た。
母は最初は人見知りして泣かれたものの、アンパンマン煎餅で懐柔し、歌を歌ったりしてすぐに受け入れられた。父は機嫌が良い時以外は近寄れない。ダメだな、男というやつは。
夕方、腹が減ると息子は大絶叫する。息を目一杯吸い込み、一瞬の間を置いて大きな口で叫ぶ。口の中を覗くと、舌と喉が見事に振動している。ビブラート。
父は、うちの息子達はこんなに泣いていたっけ、と首を傾げる。母は、こんなものよ。あなたは仕事ばかりで見ていなかったでしょ。平日に子供達と一緒に夕食を食べたことなんて無いじゃない、とやり込められた。
恐らく、父は母に死ぬまで言われ続けるだろう。
典型的な日本企業の製鉄所、発電所や淡水化プラントやらを扱う商社に高度成長期に身を置けば、本人が望むまいとそうなるのだろう。一昔前は最早、想像の世界。