とりあえず、コンクリートを打ちっぱなせば良いと思っているんじゃないかという建築家、安藤忠雄。そんな彼が設計を手掛けたTOTOシーウィンドというホテルに泊まった。まず受付を済ませて出迎えてくれるのが足弱や妊婦、幼児連れを一切拒絶するような巨大階段。エレベーターもスロープも無く、乳母車や車椅子を一切受け付けない。そしてその前方にはこれ以外には見るなと言わんばかりに視線を制限したラウンジと水平線。とんがってます。
地上より遥かな高さに立つ無機質なコンクリートとそこに渡された鉄橋。淡路島から大阪湾の絶景を望める。
夏には泳げるらしい。全体的に老若に不親切なデザインの建物なのだから初志貫徹してプールを囲う柵などつけるべきではなかったと思う。そうすればシンガポールのベイサンズのインフィニティプールのような光景を得られたはず。
客室は解放感に溢れる。6畳間が二つに吹き抜けのダイニングキッチン。しかし絶景の岸壁の上に建ちながら、部屋からは海は視えない。安藤忠雄が敢えて木々で見えないようにしたのだそうだ。部屋からは見えそうで見えないチラリズムを志向したのだそうだ。やつはドSか。全く理解できない。わざわざ狭い不便な山道を登ってたどり着く客はそんなことは誰も望んでいない。素晴らしい景色を素直に見せる自然への敬意がこの建築家には足らないと思う。
メゾネットの二階には設置時に最先端であったであろうジャグジーバスがある。大きな窓ガラスが海に向かって据えられているが、やはり木で海は見えない。そのかわり、バスルーム内に防水テレビが埋め込まれている。もう一度言う。風呂に入りながら海の絶景を楽しめるようにすべきだ。テレビなんぞではなく。自然との調和ではなく自然の否定と屈服が一貫した主題なのか、この建築家は。
利用する人の利便性と自然景観との調和は外さないで欲しいものだ。
建築家の悪口を言い連ねながらも、滞在をとても楽しませてもらった。息子はケラケラと笑いながら部屋から部屋へと高速で這い這いしてまわり、何十段もある階段を8回近くも登った。私達親は階段を登れることを知らなかった。これまでこんなに運動したことはないのではないか。
そういえば、一家三人で風呂に入ったのも初めて。部屋食で寄せ鍋を頂き、息子に取り分けながら他の客に気兼ねなく食事をできたのも有難かった。