遷都

古の都から、現世の都へ移ることになった。おめでとう、と同僚は紋切りに言ってくれるが心の内では落胆している。京都生活があまりに快適だったものだから。


庭の楓や仙人掌は処分せんといかんのか、マンゴーが歩ける野山はあるのか。息子と散歩する木陰はあるのか。心配ばかりが先立つ。


それ以上に東京に行くと止まっていた歯車が複数動き出してしまう。億劫で避けていたものと向き合わないといけなくなる。


思えば仕事も生活も快適過ぎてすっかりぬるま湯に浸かった隠居爺のようになっていたのだろうな。


どれも因果応報、自業自得なのだけれども、自分が描いていたものからどんどん遠ざかっている感がある。また流されていく。