箱根宮ノ下 楽遊壽林


箱根宮ノ下の日帰り温泉へ。いつかは富士屋ホテルに泊まりたいと仰ぎ見ながらそのすぐ先にある崖下の楽遊壽林へ。大正の始め、当時の大富豪 郷誠之助男爵により開苑されたと聞く。


商業における写真の力はすごい。写真は嘘つきだ。不都合なものをフレームの外に隠し、観る者の想像力を広げてくれる。自分ごときのこの写真ですらそうだと思うのだが、上手く撮れば都合よく美化された記憶を残せる。なまじ写実性が高いので絵画よりも美化する力は強いのかもしれない。




日帰り入浴一人2500円。時間制限が無く人も少ないので大広間の休憩室で開け放たれた窓から緑を眺めながら、ごろりと転寝をしてくつろいでいく客がちらほら。ホームページを観ると立派な設備が緑と融和した素晴らしい施設に見える。実際に風呂から眺める緑は美しく、休憩室も解放感があってよいのだが、ホームページとの印象の落差に驚く。古さとボロの狭間。というよりもすこしボロに寄っている。



源泉かけ流しの風呂に身を沈めて、木々を眺め、人の少ない大広間で涼しい風を感じながらくつろげるのだから、それを求める人にはこのボロさは適度に人を遠ざけて良いのかもしれない。学生の時分だったならば小説でも持ち込んで、風呂に入ってはゴロゴロと転がりながら小説を読んで有り余る時間を愉しむのも良かっただろうな。


風呂から紅葉が眺められるというのは自分の知る限りの贅沢の一つだと思う。湯船の高さに窓を設けて、窓の外に紅葉を植える。たとえ湯船がボロだろうが檜ではなくプラスチックだろうが、紅葉の美しさと湯の温かさは変わらぬわけで。まあ、田舎ならば500円で同じことができる。そこに2500円もふっかけられるのは都会から人が押し掛ける箱根の看板の強さか。