学ぶべきは何か

友人アンドレイの幼なじみが営むペンションに泊まった。


ドドと呼ばれるその幼なじみは頭も良く、大企業で管理職として順調に出世もしてドイツでも何年か働いていたらしいが突如会社を辞め、何ヶ月も消息を絶っていたらしい。会社に勤めていた頃から出社前や後にマリファナを吸うようになり、本人は吸った後の方が頭が冴えるなどと言っていたらしいが段々と周りも彼の変化に気付いていったという。とはいえ、大麻が問題になって会社を辞めたわけではない。


暫くはアーティストをサポートするNPOだかを立ち上げて活動していたらしいが、ホームページを見てもそのNPOが何を残したのかはわからないとアンドレイは言う。多くの例に洩れず生活の糧にはならなかった。


4か月前からこのペンションの経営に加わっているそうだ。ペンションの内装を若いアーティストの壁画で埋め、不思議なオブジェがあちらこちらに置かれ、壁の本棚には雑誌や本が積まれている。やりすぎず雑多さとスタイリッシュさの混合で面白い。京都のカフェにありそうな雰囲気を少し感じる。面白い。流している音楽はようわからんがどれも聞いたことのないカッコ良いものばかりだった。


カフェには日本茶も山茶や玉造茶、玉露、煎茶といろいろ取り揃えている。コーヒー豆も各種産地のものを取り揃えておりそれらの販売もしているようだった。カプチーノも香りが芳醇で美味かった。


朝食を作ってくれた女の子は素敵な子で、朝食を作りながらも「こんな話し掛けて邪魔じゃないかしら」なんて言いながらも横浜ってアートギャラリーがたくさんあるって聞いただの、一度は行きたいだの、いろいろ話し掛けてくれる。他の店員も友人も9時を過ぎても誰も起きて来ないので周辺を散歩して静かな朝を十分満喫した後にはお喋り相手がいるのは愉しかった。


ホテルの従業員は朝の女の子も含め、ドドを筆頭に年柄年中大麻を巻いては吸っているようだった。アンドレイに言わせると、ドドはまだ可能性をたくさん秘めているのに大麻を吸いすぎていろんなものをダメにしてしまったという。常に夢やアイデアを語っているけれども形になるのは1割も無い。多くの友達も失ってしまった。もったいない、俺はあいつがわからなくなった、と嘆く。


自分は結婚もせず子供も授かっていなかったらかなりドドと似たことをしていると思う。ドドほどには形にできないかもしれない。流石に大麻は吸わないだろうけど。


多くの友達を失ったというけれども、何も互いの深い部分を知らない知人が大勢いたとて、そしてその知人達と連絡を失ったとしてもさほど困ることはあるのか。嘆きながらもドドにはアンドレイのようにわざわざ日本人の友人を連れて泊まりに来るような彼から離れることのなかった友人もいるではないか。


ドドの何がそんなに悪いかも含め、なんとなくとても自分の教訓となる話のような気がしている。


好き勝手にやるとしても、家族や友人と断絶しない程度の中庸さやバランス感覚、そして経済的基盤と安定が必要だということだろうか。