猪の陶製ジビエ鍋

ロアン宮の装飾博物館で見つけた逸品。これを観れただけで入場した価値があった

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毛の流れまで表現された写実性に富んだ造形。舌がダラリと横から垂れ下がっている。

 

分類すると、巨大な陶鍋なのだと思う。耳を掴んで蓋を開けたら中から猪肉の煮込みが出てくるのか。それとも猪肉のハーブ焼きの肉片がゴロゴロと出てくるのか。ジビエの為のジビエ鍋。

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なんと断面まで忠実に再現。太い脊椎には骨髄。赤肉と脂肪。ここまでする必要があるのか、をここまでするから面白い。猪の断面がここまで三角形だとは知らなんだ。屠殺への理解が浅い。

 

 

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涙腺まで表現された、暗く褪せて死んだ目。

 

この鍋で出されたら、「わー 美味しそう!」となるのだろうか。野山を駆け回っていた猪を捕らえ、命を奪い、断首して、解体し、調理したことを改めて意識させられる。

 

食欲増進にはならないようにも思うが、「肉を食べるとはそういうことでしょ?」という問いにも開き直りにも思える。日本人が鯵の活け造りに食欲を失わないのと同じかもしれない。

 

陶磁器としてはボーンチャイナに全て色絵付けをしていると思われる。カオリンがなかなか採取できない欧州では白土に牛骨を混ぜるなどして独自の開発をしたのだそうだ。ボーンチャイナは中国伝来作陶のことだと思っていたが、骨を混ぜて中国陶器風にした欧州の作陶技法のことだとは。

 

制作者は「写実的に作ってやったぜ。うわ、リアル過ぎて気持ち悪い!とか言われんかな(ワクワク)」といった心境だったのではなかろうか。

 

同行した新入社員の若い女性に「これ、すごい悪趣味ですよねー」と同意を求めてるのかわからない感想を吐かれ、「え。。い、良いんじゃない?俺は好きだよ。」と濁しておいた。ストラスブール観光の最高潮がこの瞬間だとは言い出せなくなった。

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七面鳥なんかもあったけど、猪ほどの面白味はない。