高円寺の名物パティスリー、つまり街のケーキ屋さん。ケーキを買いに来たのだが、創造性に富んでいて見ていて楽しい。
今は最高に白桃が美味しい季節だけれども、その白桃を丸ごとくりぬき、さらにその中にクリームを詰め込んだというタルトケーキ。美味くないわけがないし、丸ごと食べているかのような満足感も高そうだ。
フランボワジェの華やかな多層構造。
マンダリンオレンジのムースと紅茶のムースを泥漿技法のようにマーブルに混ぜ合わせ、しかもクリームブリュレ入り。
どれもこれも美味しそう。で、見た目は一番地味だけど高円寺ロールケーキも絶品なのだよな。何を買うか悩ませる。
初志が揺るぎそうになったが、ちゃんと買うべきものを買わなければ。誕生日ケーキ。それはやはりクリームで覆われていて蝋燭をさせて、メッセージプレートが載せてもらえるやつだ。
当日に予約もなしにいきなりいってもホールケーキが常に売ってるわけではない。ショーケースの中にホールケーキは無かった。ホールケーキは最短でいつ予約する必要があるか聞くと、前日だという。そりゃそうだよな。しかしダメ元で尋ねると、幸いにして高円寺の別店に4号ケーキが残っていたのでたまたま居合わせたジュンホンマ氏が取りに行ってくれるという。最高。
こちらが「自分へのご褒美」ケーキを超える「自分へのおめでとう」レア白桃ケーキとなります。参考にどうぞ。ここでいうレアはレアチーズのレアとは違うかもしれないし、深い意味で同じかもしれない。
粗と密を不均衡にすることで視線を誘導するデザイン技能がある。あえて定番の文言を上に詰めて、下部の大きな余白に視線を誘導すべく書く。なんとなく、最後の二文字を書く前にパティシエが深呼吸した様が瞼の裏に浮かぶ。メッセージプレートの書き方からしてジュンホンマは一流ケーキ屋さんだと思っている。
メッセージのお名前はどうされますか、と聞かれ答えた際の爽やか青年店員の崩れない微笑も忘れがたい。接客もしっかりしている。内心では「うわ、初めてみたよ」「4号って4人分ぐらいですかね、って全部自分で食べるんじゃないの?」「誕生日自作自演きっつー」とかいろいろ脳内を駆け巡ったかもしれない。客を差別することなく、どんな祝い事も受け入れてくれる店なんだ、ここは。
はよ、珈琲飲めるようにしてイートイン始めてくれないかな。