八幡宮から東へさらに進んでいく。面倒ならばバスで鎌倉駅前から杉本観音前まで行くと楽だ。ここまでくると観光客は一気に少なくなる。
さすが、鎌倉三十三箇所、坂東三十三箇所、双方の第一番の札所だけあって風格がある。伝創建734年なので1200年近くにもなる。
ここの仁王様、とりわけ阿形の顔の凛々しいこと。目に精気を宿しているように見える。
ほんの数ミリの造形の差が全く異なる存在感の差となって表われるのだろう。好みで言えば、この造形のまま色を塗り替えたい。
そして苔を愛する参拝者にとっての白眉がこの正面石段。石がすり減り苔が生して現在は通行できないが、それがまた苔の保護育成につながりなお美しい。
苔の石段の脇の階段を上がる。背後にはかつて杉本城があり、足利方の武将で鎌倉府執事を務めた斯波家長が、南朝方の北畠顕家に攻められ、この寺で自害した。それらの慰霊塔だそうだ。700年経った石塔は風化し藻苔類が根深く活着している。
中央石段を上から見下ろしたところ。一部、苔が発光しているのではないかと思えるぐらいの緑の鮮やかさ。
苔の選別をしているわけではなく、場所によっては銭苔が繁茂している。
杉本寺の苔の石段を堪能した後は、歩いて数分の報国寺へ。
ここの苔床もこれまた素晴らしい。枝一つ落ちていない、毎朝、丁寧に掃き清められたであろう苔の絨毯。
こちらは竹林が有名な寺でもあり、奥では竹林を眺めながらお抹茶をいただくことができる。
京都まで足を運ぶことのできない旅行者にとって京都の苔寺と嵐山の竹林を代替する景色がここで得られる。さらに鎌倉内のどこかに千本鳥居でもあれば、外国人の目指す日本的な絵面が揃うのだけれども。