夏だ。何か新しいことに取り組もう。
仕事に役立つ本を読むか、語学を習うか。考えた末に、サボテンの実生に挑むことにした。サボテン愛好家の底なし沼の縁に踏み入れる行為だ。一見、仕事に役に立ちそうな付け焼き刃な知識を得るほうが有意義そうだが、それよりも平穏な心で仕事に向かえることの方が重要だという怜悧な判断の結果だ。
買えば一球、数千円はしてしまうサボテンだが、種から育てればたくさん得られるのではないか、との打算もある。
自分で焼いた陶器鉢に植え込んでネットで売れば、陶芸代の足しにできるかもしれないという妄想と下心もある。
まずはバルコニーを整えた。FRPの床はそのまま座ったり寝転ぶには殺風景だったので、ウッドパネルを敷き詰めてみた。30cm四方のパネルを50枚、値段にして1万5000円ほど。安くヤワな杉材に塗装を施したものではなく、アカシア材なのでこれに定期的に防水ウレタンを塗布して使えばある程度は持たせられるかもしれない。
悪くない。くつろぐ際にはさっと拭いて、クッションでも置いて、珈琲でも飲みながら。週末に家で過ごすのがさらに好きになれそうだ。
種は折角なら好みの品種のものを育てたい。成長の遅いサボテンを1年育てた結果、そこらの庭先で雨に打たれても育つようなサボテンだと切ない。
そんなわけでこちらが奈良多肉植物研究会から取り寄せたサボテンの純正の種。胡麻粒の1/4ほどしかない、くしゃみしたら吹き飛んでしまう小ささ。
月世界 20粒 600円
姫春星 20粒 500円
どちらも希少種ではないし、姫春星はホームセンターでも売っている品種だ。しかし巨大な群生株は実に見事で高値にもなる。同一株をたくさん持っていて結実させられたら種を売っても小遣い稼ぎになるのだろうか。
育苗箱をホームセンターで買った。トレイが付いていて底に水を張ることで腰水で給水できる上に上から被せられる透明の蓋トレイも付いている優れもの。そう、上から水をドバドバと掛けるようなことはせず、底から水は吸わせるものらしい。
姫春星の大群生。こんな見事なものはなかなか作れないけれども一株にこだわらずに複数株で群生させたら面白いと思う。
月世界の群生はこんな感じ。まさに月面。一株を多頭にし過ぎると中が蒸れて油断するとあっという間に腐れてしまうことがある。実生の株を複数使い、かつ株元に通風をはかる鉢を考えてみようか。
平面をこんもり盛り上げるだけではなく、立体的な鉢にできないものか。
姫春星、月世界の群生の魅力を引き立てる鉢を考えてみたい。