仕事の関係で丸の内に行く機会があり、1時間ほど空き時間が生まれたのでかねてより行きたかったキッテという商業ビルとその中のインターメディアテクという美術館に足を運んだ。
インターメディアテクは東京大学収蔵品が展示されたなんと無料の美術館。
お抱え外国人技師や教授の肖像画が展示されているのだが、生年と没年が皇暦表記だった。
写真撮影不可につき、当館WEBより拝借。
古めかしい飴色の木製陳列棚に痺れる。焦茶の落ち着いた木の基調に強いピンクや緑が組み合わされ、なんとも上品でスタイリッシュで欧州のギャラリーのよう。パリのケブランリー美術館にも大いに感心したけれども、こちらもなかなかのもの。そうだ、こんな空気感と色合いの書斎を持つのが夢なんだ。
均等で連続的な陳列。主役のように開かれたガラス戸の中に鎮座する立派な鹿の頭骨。ここにも鹿が。
バビルーサの頭骨。脳天に刺さって絶命するまで伸び続けることも稀にある牙。それよりも上顎犬歯が鼻を突き破って伸びることが怖い。成長痛どころの話ではない。
タイマイの腹はさほど骨に覆われていないのに対しイシガメなどはガッチリと箱状に蓋をなしている。
ナナイロメキシコインコ。骨格標本に翼の羽根と尾羽だけがつけられている。その骨と羽根の対比が斬新。
ヒキガエルの大腿骨の方が、ネズミのそれよりも太い。
新しい発見だらけ。
展示の空間と色彩設計が素晴らしい。
畸形角を持ったニホンジカの頭骨があって目と心を奪われた。鹿の頭骨から海サンゴが生えているような不思議さ。ここにも鹿。
美術館を出ると、見上げる巨大なクリスマスツリーが聳えていた。見事な枝振り。
創業300年の中川政七商店の雑貨屋があった。向かい鹿の商標。中身はサクマドロップなのだけれども、パッケージ買いしてしまう類だ。マーケティングとデザインの巧みな人の力を借りれば古い老舗は何度でも甦る良例。
選りすぐり珈琲豆の包装袋にも珈琲を飲む鹿が描かれる。
なんだか、鹿ばかり見る。あるいは気になってしまい鹿ばかり見つけてしまうのか。
古来から鹿は神に近いものと捉えられることもあり、みさき、つかわしめとされた。春日大社・鹿島神宮・厳島神社の神獣、使徒とされている。神鹿。アクアイグニスの風呂前の暖簾に描かれた鹿が脳裡に浮かぶ。
もう少し神秘性を備えた鹿を象った鹿鉢を作りたい。
首はもっともっと長くても良い。
しかし頭は小さくないとダメだと思う。
アンバランスなくらい小さく。
自然と植物の形の妙が感じられる多肉植物を角のように生やしたい。
勝手にあれこれ込めて、暗示させたい。
眼に生気を宿したい。眼だけ黒釉薬を掛けようか。
奈良神鹿仏舎利逗子の神鹿
植物の多様性と豊かさを象徴するものとして、鹿角をヨリシロにしたい。
また座位の鹿鉢を作ろう。自分の頭の中で描くイメージに近づけていこう。いざ手が動き始めたら1、2時間で済むのだから。
運慶作の1つがいの鹿。こちらも首が長くデフォルメされている。
背中からそのまま植物を生やすのもそのまま鉢そのもの。こんな一体も作ってみようか。
目指せ、鹿鉢尽くし。