赤身の低温調理肉が美味しすぎて、これをなんとか家で調理できないかと調べた結果、真空調理器に辿り着いた。フランスで第四の調理法sous videとして主流派となり、英語ではvacuum pouch cookingと呼ぶそうな。
業務用調理器具は最低でも数十万円もする家庭利用には高価なものだったが、Anovaというブランドの手軽な真空調理器具が2万円前後で発売され、1年ほど前からブームになっているそうな。つまり、1年遅れで流行り物に飛びついたわけだ。我ながら情報感度悪いね。
さて、このAnova。何してくれるものぞ。
- 鍋の胴に手軽に設置可能
- 温度を0.1℃刻みで設定維持できる
- 温度ムラが生じないよう攪拌できる
- 調理時間終了を知らせるタイマー付き
- 火を使わないのでコンロを占有しない
- WiFiやBlueToothで操作可能
でも考えてみれば簡単な攪拌ファンが付いていて、鮮度の良い温度センサー、タイマーが付いていれば良いだけ。何も中性子を加速させて筋繊維の細胞壁にぶつけようとかそんな話ではない。はっきりといってローテクノロジーのシロモノ。
Anovaはだいぶ値段が落ちてきた昨今でも1万6千円ほどかかる。しかし探すと類似の器具がもっと安く出始めている。何せ機能的には単純だから真似されるのも価格破壊も早いと思われる。最終的には4千円程度のものがでてきてもおかしくはないと思う。
私は試しにOMORCというブランドのものを買ってみた。9,000円強とAnovaよりもかなり安い。その代わりWiFiやBlueToothでの遠隔操作ができない。しかし温度を決めたらそれを長時間維持する調理法に遠隔操作は必要だろうか。しかもBlueToothは数部屋離れると効かないらしい。OMORCは遠隔操作機能が無い以外は性能は一緒のようだ。デザインやボタン操作すら酷似している。
そんなわけでOMORCという下位互換ブランドで真空調理してみた。
ステーキ肉は、霜降りとくらべて旨み成分のアミノ酸が多く含まれる、赤身のヒレ肉を使用すると良いらしい。今回は正月の三が日ということで愛しのJUMP精肉店が営業していないので西友で100g138円のアメリカアンガスビーフを購入。牛肉としては底辺価格に近いので真空低温調理器具の真価が露骨に問われる。
- 肉は夏なら2時間、冬は5~6時間、焼く前に冷蔵庫から出しておく。冷たいままだと中心温度が60℃に達する頃には外側は焼き過ぎになってしまうので、肉の温度を20℃~25℃に上げておく。
- 和牛の牛脂を肉の両面に貼り付ける。和牛の牛脂には、「ラクトン」という牛肉独特の良い香り成分が多く含まれており、その良い香りを移す。
- サラダ油に浸したキッチンペーパーで肉を包む。安い肉の臭みを飛ばすのが目的。
- 耐熱のジップロックに肉を入れ、鍋の中に沈めて水圧で空気を抜く。
- 20~30mmの厚さの肉ならば58℃で2時間ほど真空低温調理する。57℃とするレシピが多いが水圧をかけて空気を抜くだけの簡易真空なので若干高くした。(真空低温調理器具がなければ120度に温めたオーブンで15分焼き、裏返してさらに10分。合計25分ほどじっくり時間をかけて焼く。)
- 芯まで火を入れたあとに塩をする。塩は早くに振ると浸透圧で肉汁がしみ出してしまう。人間の体内の塩分濃度は体内の水分に対し約0.8~0.9%と言われており、同じくらいの塩分濃度が本能的に美味しいと脳が感じるという理由から科学的には0.8%の塩分量にするといいらしい。
- フライパンに牛脂を入れ強火で30秒、ひっくり返して15秒焼く。100℃以上の加熱によるメイラード反応でさらなる旨味と香りを出す。155℃が最もメイラード反応を促進させるがその為にはテフロン加工のフライパンではなく鉄のフライパンが必要とのこと。
- 黒胡椒を振る。加熱前に振ると焦げて風味が損なわれる。
- 完全に焼きあがったらアルミホイルに包み、肉を5分ほど休ませる。加熱された肉の内部は細胞内の水分が膨張して暴れている状態で、その状態で肉を切ると中から肉汁があふれ出してしまうらしい。
- 出版社/メーカー: OMorc
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パテントを保護し損ねた典型例かと思われる。AzrstyもBoniqも中身は大差なし。そもそも、さほど高度な技術ではない。技術ではなく発想と組み合わせの勝利。