南京西路にスターバックスの巨大旗艦店が昨年12月5日に開店し大変話題になっていると聞いて早速、足を運んだ。
途中で道を聞いたのが恥ずかしくなるぐらい巨大で目立つ建物だった。まるでコロッセオというかなんというか。
入場制限の長い行列。店内に通されるとその店舗の大きさに驚く。 これまで最も大きかったシアトルのロースタリーよりも倍の2800平方メートルもあるのだという。
巨大なロースタリー工場が博物館、科学館、あるいは劇場のように客席から見える中央に鎮座しており、ローストされた豆が直接天井を這う輸送管を通って提供カウンターに送られるのが客に見えるようになっている。
サンドイッチ、バゲット、ケーキ、キッシュ。通常のスターバックスの超ハイカロリーのドーナツやマフィン主体ではなくポールのような本格的ラインアップ。ミラノのベーカリーブランドと組んだようだ。
ピザ一切れは78元(1300円!)なんて高すぎるだろう、とケチをつけても上海っ子は「でもとても美味しいし」という。もう、私が言ってるのは貧乏人のいちゃもんなのだと気づいた。
ベルギー王室御用達ショコラティエのノイハウスとのコラボコーナーを発見。値段がいかつい。
果てはビールカウンターまで。取り敢えずなんでも良いもの大集合。
コーヒーもコールドブリューやフレンチプレスまである。豆も無数。
それだけではなく服、アクセサリー、ポスターやマグなど。
魔法瓶仕様のボトルに魔都と書かれている。実物は蓋からボトルまで重厚感があって写真以上にかっこよくて欲しくなった。398元。(6800円!)
売られているものはどれもこのロースタリー特別仕様の商品で素材も高級ならば値段も高級。インテリア性が高く、ここのスタバロースタリーグッズが部屋に並ぶだけで部屋がカッコよくなりそう。プレゼントでもらったら多くの人が嬉しいし自慢になる品々なのではないだろうか。
席はウォールナット調の席と椅子で統一されていてハイカウンター、ローチェア、ソファ、予約席のさらにお洒落なコーナーと様々。
最高品質のロースタリーとカルチャーを牽引していくと高らかに宣言しているわけだな。ブランドの刷新と高級化の好事例として企業の幹部連中が団体で訪問するのも納得。
日本ではスターバックスはもはや、落ち着いた雰囲気で仕事もしやすいカフェだが、珈琲は美味しくないと認識されているのではないか。フラペチーノだの甘ったるい珈琲ならざるものを売りにしている店と思われてやしないか。美味しい珈琲を出す店としてVERVEや猿田彦やブルーボトルコーヒーや無数のロースタリーカフェに座を奪われてしまっているが、上海ではスターバックスが奪還することに成功したということか。
ちなみに成田空港は魅力的な飲食店に乏しく、時間潰しが必須な場所だというのにドトールとタリーズしかなく、スターバックスが無かった。また日本でスターバックスの顧客満足度は下がる一方だという。
世界的に見て、スターバックスグローバル本社にとって日本は取るに足らない市場に地盤沈下しはじめていないだろうか。中国での「仕掛け」の大きさと人だかりを見るとそう思わざるを得ない。いやいや、青山や渋谷は地価が高くて無理なわけでこんな大きな旗艦店を作れるのは中国だから!などと負け惜しんでみても地価は既に上海の方が高い。極上コーヒーとマーマレードクロワッサンだけで1700円しても入店制限がかかるほど人が押し寄せるのが上海。東京でやっても採算が取れるかわからないが上海でなら儲かる。そう思われて先に上海で大きな勝負に出た。以上。
せつないね。日本は後回し。
上海の成功が中長期的に確実となったならば日本にも展開予定だとも聞く。天邪鬼な私としては舌の肥えた日本人に空間と雰囲気のハリボテを見抜かれてスターバックスの安易な高級化路線が失敗するというシナリオを心の隅で祈ってたりもする。難点はハリボテの精度はかなり高いという点だ。カモにされたくない。されない日本であってほしい。オーストラリアの珈琲文化がスターバックスにオーストラリアからの全面撤退を決断させたと聞くとオーストラリアに拍手を送りたくなる。スターバックスが支店を展開しない小さなカフェが犇めく高円寺という街が好きだ。
色々書いてたどり着いた心の内は、上海の市場としての熱さはもう否定のしようがないということ。しかし高級スタバの値段にその価値を感じていないのも事実。1000円も出さずに同等以上の美味しい珈琲を出す店は日本には多い。願わくば、もっと美味しい珈琲を提供しつつも上海のスターバックス ロースタリーのような規模の大きくてワクワクする店を日本の珈琲屋に作って欲しいのが真意であり本音だ。壮大な構想力への嫉妬なのだ。