平家落人の湯西川温泉 冬の陣 「平家の庄」

 奥鬼怒川を北に抜け、川治温泉を抜け、湯西川温泉へ。平家の落人が潜んでいた深い山間の集落で、確かに高架や山腹を貫く道路がなければ冬は外界から閉ざされてしまうような所だ。最も寒い時期に敢えて寒そうな温泉地へ、雪見風呂を目指して。

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  • 平家の庄は価格変動が大きい。泊まるならば平日。
  • 貸切風呂の追加料金は夕方の明るい時間か早朝に入るならば価値有り。
  • 溢れた湯が川へと流れ落ちる源泉掛け流し
  • 海外からの友人を連れて来るには最適。特に裸に抵抗のある人に開放感あふれる川辺の露天風呂を堪能してもらうには。
  • トイレと風呂のない部屋もあるので注意
  • 日本の高級旅館に当たり前のサービスを期待するべからず。朝食のジュースや珈琲など。
  • 和の要素を寄せ集めたワンダーランド
  • バイキングは焼き鮎、焼き餅、鹿肉のたたきが美味しい。
  • チェックインは延々と立って並ばされて辟易とするが、家族の誰かに代表して1人、犠牲になってもらうべし。
  • 夜のかまくら祭は一見の価値がある眺め。少し明るいうちに行った方がかまくらであることが識別できて風情がある。
  • 雪見風呂とかまくら祭を楽しめる冬がオススメ
  • 若い人や子供が大きいならばかまくら祭会場のかまくらの中で食べる平家鍋もBBQも楽しそう。

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ちょっと天狗が多すぎる入口。建物内には数十もの面が至る所で客を見下ろしている。

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天狗の面を潜ると仁王像が睨みつけてくる。結界ですか。何かが館内で封じ込められているのですか。欧州のホテルに泊まって入口にキリストの磔像やサロメが所望したヨハネの首なんて飾られていたら寛ぎのもてなしどころではない。同様に、天狗や般若、仁王像はもてなしの旅館の装飾としてどうなのだろう。

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雅楽の太鼓やら戦利品の陳列のような感じ。でも欲しい。この一角は神社の倉庫といった感じ。

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巨大な木の獅子頭。祭に使われたものか売り物かはわからないが内装用とは思えない派手さと迫力。

 

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取り敢えず、天童という言葉が浮かぶ。廊下には無数の民芸箪笥が置かれ、山形産のものが多かった。

 

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とても納得がいったのが「中二病的な和」という表現かもしれない。都会の子が、それぐらいの年頃に般若のお面だとか龍の図案とか、模造刀なんかに憧れてしまう感じ。中世の欧州的ファンタジーの世界に憧れる子もいれば、中世の和の世界に憧れる子もいる。そのぐらい日常生活に馴染みのない「和」が増えているのかもしれない。

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海外からの観光客を当て込んでいる宿なようで、中国語で中国人客をもてなす従業員を幾人か見かけた。外国人にとっては、てっとり早くこういう「ジャパニーズ」が強めな絵をたくさん見れて楽しいかもしれない。

 

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着物も化繊のキラキラとしたもので、写真映えはするのかもしれないが、実際に着物に馴染みのある人からしたら興醒めかもしれない。

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本来あるべき場所を無視して異国情緒あふれるものを同一テーマで集めた感じ。

 

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薄いのだが餡が入っていて素朴で美味しかった。レトロな図案も良い味が出てる。職場の土産にはこれを買っていこう。

 

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ここから先、立ち入るべからず。女風呂を覗く男衆は仁王像が無限の地獄に突き落としてくれます、ぐらいの威嚇。いっそのこと、厠の入口にも。。

 

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館内の調度品の「ゲイシャ・サムライ」が過剰だとしても、雪山の川辺の露天風呂の素晴らしさは損ないようがない。湯船が岩を刳り貫いた龍だとしても、何故か入口に西洋の裸像と同じぐらいの雑な位置に観音石像が置かれていたとしても、川の眺めと露天風呂の前には存在感を持たない。

 

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追加料金2000円で6つの貸切風呂を朝の9時まで何度でも利用できるのは嬉しい。どの半露天風呂も川に面して眺めが素晴らしい。

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気温4℃における泉温43℃。pH8.8のアルカリ泉。それが掛け流しで溢れた湯が川へと流れ落ちていく。

 

これだ。この露天風呂と湯を求めて山奥まで来たのだ。

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家族四人でも広々と入れる貸切風呂は有難い。こういう時、夫婦子供全員で入るのも幸せな時間。

 

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ツララが斜めになっていた。こんな谷間の宿なのにそんなに風が強いのか、と思ったがおそらくは雪が軒先きから滑り出し、垂れ下がったために角度が変わったのだと思う。

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蜘蛛の巣すら凍る寒さ。

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湯西川温泉ではかまくら祭とやらが催されており、手作りの無数のかまくらに明かりが灯されて幻想的。

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最初は300基ほどだったのが年々増えていき、今では1000基まで増えてこれを目当てに客が遠方から訪れるほど。

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そこらに有り余る雪を活用した町興し。最初は、「そんなもんで客が来るんかいな」と懐疑的な人も多かったに違いない。

 

今では大人1000円子供500円でスノーパークも出来てそり遊びが出来たり、天然露天風呂に入れたりと小さな子供づれにはとても魅力的。

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唯一の通りを歩くと、熊や猫の雪達磨が酒屋や土産物屋の前にそれぞれ並んで観光客を楽しませてくれる。これも集落の組合が一丸となって盛り立てようと団結している。

 

湯西川温泉に辿り着くまでに鬼怒川温泉川治温泉を抜けて来なければいけないので立地はけして良くはない。それにも関わらず集落が一丸となって上手に集客出来ていて素晴らしい。

  • 東京各駅からの送迎バス
  • 雪深さを逆手に取った野趣あふれる温泉
  • ハコモノに頼らず雪を最大活用した幼児が夢中になれるスノーパークの巨大そり
  • インスタ映えの時流に合致したかまくら祭の夜景
  • かまくらの中で食べられる鍋などの都会人に魅力的な仕掛け
  • 売上に直結しなくても温泉街への集客を意識した商店街の取り組み

これだけ纏め上がった取組の原動力となった人はどんな人なのだろう。まだまだ知恵を絞れば魅力的な観光地は生み出せるのだなあと、とても感銘を受けた。

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宿に戻り、子供らを寝付かせ、深夜の貸切露天風呂へ。雪が青白く照らされ幻想的。極楽極楽。

 

人前で裸になるのが抵抗のある外国人には鍵を渡して一人で入ってもらえるので良いかもしれない。これを機に露天風呂に目覚めてくれるかもしれない。客観的に考えると1万2000円程の価格帯でこれだけの広さと風情の貸切露天風呂に入れる宿はそうはないのではないか。

 

 外国から友人が遊びに来るならば、ここの温泉は一案だな。覚えておこう。