高円寺の夜の雑踏と店ぶれを記録に残す-純情商店街、高円寺銀座

 高円寺純情商店街と言えば、ねじめ正一氏の同名直木賞小説で有名だ。そもそも小説に合わせて後から高円寺銀座商店街から改名している。

 

そのネームバリューからか、「サンドラッグ」、「セブンイレブン」、「紳士服のアオキ」や「ブックオフ」、「リカーオフ」と大手の店に大部分が入れ替わっていて私個人としては高円寺の中でも最も個性と魅力に欠けた商店街なのではないかと思っている。それらの店は別に純情商店街に出店するイメージ的な恩恵はないと思うのだよな。

 

葛飾柴又帝釈天前や巣鴨地蔵通りのような保存管理はされず、純情商店街などと名前だけ変えてしまったから、小説のモデルになった乾物屋やらは他の商店街よりも早く消滅したように思う。

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それでも僅かに個性的な店は残っている。ハンモックがいくつも吊り下げられた「松の木食堂」。数年前は「コシタンタン」という名前だった。アウトドア料理、つまりダッチオーブンで焼いた肉やら燻製料理やらをハンモックに揺られながら楽しめる。そういう豪華キャンプがしたい。

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 バンパイヤと読む。まだいったことがないのだが、美味しいと聞く立ち飲み屋だ。

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 ここら辺は脂っこい肉と酒を飲む、若い人向けのチェーン店が集中する。一階に串カツ屋、二階には鶏肉屋「ちどり亭」。

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 山形から沖縄、果てには上海にまで展開する鶏唐揚げチェーン店「がブリチキン」。

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 磯丸水産や鳥良を展開する大手による餃子専門店「いち五郎」。どこの駅前にもありそうな店ばかりで面白くはない。まあ、均一化し最適化され、かつさほど値段も高くないメニューの店が欲しい人もいるだろうし、そういう一角があっても全然構わないのだが、それが純情商店街に集まっているというのが皮肉に思える。大資本の店に埋め尽くされて、純情なんてあるんかいな、と。

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 純情商店街を突き当たると、クラフトビールの店がある。ビール樽を積み上げたテラス席があり、高頻度で外国人を見かける。その少し先には高円寺麦酒工房があるけれども、街に馴染みのない観光客には麦酒工房は見つけづらいかもしれない。

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純情商店街の半ばを東に入っていくと、左馬がある。

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 この周辺はまだ高円寺銀座の名前を残している。スタンプラリーなど街の祭りでスタンプや景品交換所としてお世話になることの多いまちの駅。

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かなり路地裏に来るとようやく高円寺らしい店が出てくる。管理栄養士、野菜ソムリエ、元栄養教諭の店主が無化調の料理を出す「星ノ夜ノボート」。水道橋博士と同窓生で、店名は同じく高円寺在住の大槻ケンヂ筋肉少女帯の曲名からという筋金入り。しかも店主は消しゴムハンコ作家だったりする。今度、ハンコを買いに行きたい。

 

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そして一押しは「BLIND BOOKS」という古今東西のアート系、サブカル系、アングラ系、禁書系の写真集やアート本を購入したり閲覧したりできる店。

 

店主の趣味やこだわりが滲み出た店が高円寺銀座ビルには集う。

 

「純情」に変わらなかった元の高円寺銀座のままの街区に面白い店が残る。この道の先には最近イチオシの出汁の味の深い肴を出す日本酒が豊富な区民酒場「左利き」があることも特筆したい。