ルーマニア人にウケたもの 追記 なぜアフリカ系にドラゴンボールは愛されるか

 

もちろんルーマニア人とて趣味嗜好は多様で一派一絡げにはできないのだけれども、知識の積み上げと引き出しの多さは「もてなし」につながるのではないかと思うので追加備忘録。

 

奥さんはスーパーで紅生姜、抹茶を買って帰った。生姜のような国際的で普遍的な素材でも調理の仕方が新鮮だったりするらしい。自国でも馴染みの素材ほど他国のアレンジを受け入れやすいということもあるかもしれない。「ZINGARO」で飲んだ生姜、シナモン、黒胡椒入りのカフェラテは目から鱗だったようだ。

 

雪見だいふく」に対して「sick」、ヤバすぎるな、この食べ物、という最大限の賛辞。和菓子の求肥は面白い質感だと思う。

 

日本酒は芳醇な吟醸香に抵抗を示す人も多い。辛口の純米吟醸あたりが無難。少し甘い口当たりだと「獺祭」あたりは手堅く喜ばれる。流石だな。

 

冷たい蕎麦よりも温かい蕎麦、本音としてはヤキソバが美味しい、また食べたいらしい。

 

「天すけ」は量が多過ぎるらしい。玉子天麩羅の甘辛いタレの味なんかはお気に召すと思ったがそこまでの反応ではなかった。厨房の見えないレストランばかりの米国や西欧の国の人の方が目の前で揚げてくれる臨場感は喜ばれるようだ。東南アジアやアフリカでは別に珍しくはないのかも。

 

地下鉄路線図にはJR路線図が書き込まれていないのは観光客には不便。

 

中野ブロードウェイドラゴンボール好きな彼に喜ばれると思っていたのだが、フィギュアに偏りすぎていてそこまででもなかったようだ。Tシャツの品揃えは良くはない。フィギュアを喜ぶのはコレクターを除いては子供、青年で大人には刺さらない。しかしドラゴンボールのファン層は30代後半から40代。フィギュアという形態とファンの年代が少し噛み合っていないのかもしれない。中野ブロードウェイよりもむしろ、池袋のJワールドという週刊少年ジャンプの連載漫画を扱った店の方が興奮したとのこと。Tシャツを購入したり、追体験したり、写真を撮って友人に見せる方が楽しいようだ。

 

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ドラゴンボールは未だにアメリカで根強い人気だという。アニメから入る人も多く、アメリカ版は冗長な会話や対峙して睨み合う時間、風が吹いてる時間を削除して躍動感のある戦闘シーンが連続するように編集されているとのこと。

 

アメリカのファンの中でも取り分けアフリカにルーツを持つ人の間で人気があるという。アメリカに限らず、私の友人同様にアフリカ系の中でドラゴンボールは人気があるといった方が正しいらしい。

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自分はどこから来たのか。アフリカ系がマジョリティの先進国は地球上に今のところない。時に差別され、疎外感を感じ、自らの出自に複雑な思いを持つ。

 

そんな彼らにはドラゴンボールに日本人には知覚できない深みと広がりを読み取れるのだという。もともとは地球侵略というネガティブな目的を持って一人、地球に送り込まれた主人公の孫悟空。成長した時に、自分が異質な存在だと周囲から知らされる。必ずしも好ましくもない自分の出自の真実をある日、突きつけられる。それでも明るく生きていく。

 

 

作中の名場面に以下のようなセリフがある。

「わかってるぜ…サイヤ人の仲間が殺されたのがくやしいんじゃねえんだろ…? 
あいつにいいようにされちまったのがくやしくてしょうがねえんだろ…? 
おめえのことは大キライだったけどサイヤ人の誇りはもっていた・・・ 
オラもすこしわけてもらうぞその誇りを・・・ 
オラは地球育ちのサイヤ人だ・・・!」

 

時に地球育ちのサイヤ人として地球の側に立って戦い、時に故郷の悲しい歴史とディアスポラに思いを寄せる。

 

出自のアイデンティティを守り、故郷の誇りを保つ。

 

実際、地球人とサイヤ人の架け橋となり、いまやベジータとブルマが夫婦なわけだ。異国で差別に会い、現地に同化しようと励み、かつては相反していたコミュニティを繋ぐ存在。

 

髪や眼の色が変わってとてつもない力を発揮するヒーローというのも、肌の「色」という特徴的違いを意識させられることの多い彼らには無意識に惹きつける要素らしい。

 

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「大人になってもドラゴンボールに夢中になってるとバカにする奴もいるけど、俺は本当にドラゴンボールで育ったんだ。」彼の底抜けに明るく無計画で楽観的な生き方と振る舞いは彼が孫悟空から学んだものだと思えてきた。

 

鳥山明氏はどこまでの深慮があってあの物語と設定を構築したのだろう。連載が終了して何十年経っても未だに新作劇場版映画が上映され、ファンが海外から来る。