半世紀前の映画の魅力 ラピュタ阿佐ヶ谷で「渥美マリ」作品

阿佐ヶ谷のジムで汗を流し、ふらりとラピュタ阿佐ヶ谷に足を向けたら1970年の映画のレイトショー上映があった。取り敢えず、観てみることにした。上映していたのは渥美マリという昔の大映女優が主演の「続いそぎんちゃく」という作品。別に日活ポルノのような類ではない。

 

1970年の作品なので私が生まれる幾年も前、私の両親が出会ってもいない昔の作品になる。

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渥美マリという女優はその当時でセックスアピールを武器にし、「和製ブリジットバルドー」とも呼ばれた人で1968〜76年あたりで活躍していたらしい。

 

女学生であんなに眉毛を引いてマスカラばっちりな女性がいるかいな。今よりもはるかに厳しく高校生の化粧など禁じられていた時代だと思うのだが。

 

上京する際の列車が鉄道博物館で保存展示されていたような木床のレトロ列車だった。登場する車が全てクラシックカー。資料館の展示物のようなアンティーク品が生活の中で彩色で登場するのを見ることができるのが面白い。1960年代映画、1970年代映画は建物や小道具を見るだけでも案外面白いことがわかった。

 

昔ながらのランダムな丸タイルの風呂場、熱冷ましの氷嚢を吊るす台、布団を並べて夫婦が寝る昔ながらの和室の寝室。

 

富士急ハイランドが半世紀前のその当時からあって、観覧車などの遊具に加えて、スケート場として賑わっている様を見るのも新鮮な驚きだった。既にオリンピック後なので代々木の競技場が今と変わらない姿である一方、あれ、これは戦前かと思わせるような街並みが映ったりもしてその当時の情景が実際はどうだったかがあれこれわかって面白い。

 

脚本や展開のわかりやすさがもはや喜劇。おいおい、な展開に観客のおっさん達から笑い声がでる。ちなみに観客は8割方が60歳以上と思われた。昔、ドキドキしながら観た憧れの女優だったりするのだろうか。

 

若かりし頃の田中邦衛が気鋭の写真家として登場する。私の中では「北の国から」の枯れた朴訥とした男の演技の印象が強い人だったが、尖ったアクの強い服を着こなしてギラギラした男を演じていて新鮮。あの口をすぼめて突き出した表情は若い頃からやっていたのだな。オネエキャラの登場人物が度々登場する。当時からホモセクシュアルはある程度認められていたのだろうか。

 

渥美マリという人は昔風に言うと「バタ臭い」風貌とでも言うのか。化粧が濃くてあまり最初は美しい人だとは思わなかったが、田中邦衛扮する気鋭写真家の写真を観ているうちに魅力が伝わってきた。実際には立木義浩という写真家の作らしい。

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ラピュタ阿佐ヶ谷では戦後独立プロダクションの1950年代、60年代の映画を7月から9月の間、上映しているようだ。1967年新星映画社の田中邦衛主演映画「若者たち」、55年文学座淡島千景主演「心に花の咲く日まで」、1956年山本プロダクション、佐田啓二主演の痛烈社会風刺劇「台風騒動記」など。

 

近代史と現代史の狭間とでもいうのか。時代劇で江戸の街並みは見慣れていても、1950年代、60年代の街並みや風俗慣習というのは私からするとすっぽり抜け落ちていてとても新鮮で面白い時代に映った。年老いた大女優やらかつての銀幕のスターは大御所としてちやほや扱われていて不可解に感じていたが、若い頃の美男美女の姿などを見ると、ああ、だからスターになったのかと腑に落ちる。


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「心に花の咲く日まで」の淡島千景の若い頃。


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往時を知る人からしたら、何を今更と言われるかもしれないが八千草薫さんの若い頃も可憐。