藝祭アートマーケットの戦利品を記録しておこうかと思う。
これが私が大学院在籍の高橋ジョニー氏から購入した指人形。指は中指なんだそうだ。
なかなかこれを作る発想は湧かない。シュール。滑稽。ユーモラス。猟奇的。
これをアートマーケットの為に作り溜めている、部屋中溢れかえっている状態が一番の見ものかもしれない。
もう一つ、特筆しておきたいのが原郷瑞希さんの作品。肩書きはArtist/Photographerとある。見た目は可愛らしいイマドキの若い学生さんでこんな作品を作っていることは外見からは想像できない。
作品は鋳込みの銅製のアレ。
一旦、型を作ったらいくつも複製できるのかと思いきや、蝉の抜け殻に溶かした蝋を流し込み、外を石膏型で制作し、蝋を燃やし溶かし出して型の中に空洞を作り、さらにそこに熱して溶かした銅を流し込んでようやく抜け殻の形の銅の塊を取れるのだという。つまり、型を作るたびに抜け殻は燃やされてしまい、型の使用は一回限り。
作品の数だけ蝉の抜け殻を集めたことになる。そしてこの蝉の幼虫の形をした銅塊は一つ一つが異なる。無論、原寸大だ。
抜け殻を使っているので制作のために羽化前の生体を殺しているわけではない。むしろ、その後は短い寿命を送ったであろう蝉の1個体、1個体を銅でこの世に留める作業と言える。なんなら蝉を銅の姿で生まれ返らせたといってもよい。
私の腕前では無理だけれども、10倍サイズの銅鋳込み作品を作って欲しい。
慎重に見比べ、か細い脚が全て綺麗に残っているこの個体を購入した。どれも一発勝負で、他の個体の多くは脚が欠けている。細い抜け殻の脚の空洞まで蝋が行き渡らなかったのだろう。うまく空気が抜けないと形は綺麗には出ない。
3000円也。今、私自身も石膏型を作っていてその工程の手間に難儀しているからなおさら、一回限りの型を作って鋳込みする労力が多少は想像がつく。労務費の積み上げで利益も載せた値段をつけるならば6,000円ぐらいつけたい。
さすがに学生さんの顔をここに載せるのは憚られるので、トリミングさせて頂いた(本人は構いませんと仰っていたが)。手に持っている羽化後の蝉は非売品。蝉の成虫の羽の翅脈まで綺麗に形になっていて素晴らしい。残念ながら制作工程は全く異なり、完全に作れたのはこの一体だけなのだそうだ。是非制作工程を安定化して来年は売りに出して欲しい。
表面に緑青を発生させるべく保管したらさらに素敵になるのではないだろうか。
この銅の蝉を見ながら、もう一度、空想ではないよりリアルな蝉の抜け殻陶器鉢を作ってみたい。
次は、脱皮羽化過程の蝉の陶器鉢を作りたい。
その前に仕掛品を完成させて片付けるのが先なのだけれども、完成させる前にもう、放り出して次の作品を作り始めたくなる。
追記:ネットで蝉の羽の翅脈を調べていたら、下記の小学生の自由研究を見つけた。その水準の高さに驚愕する。いやはや、小学生のレベルじゃない。どこかでテーマや材料を購入して取り組むぐらいなら自由研究なんて無くして夏休みは存分に遊ばせてやれと思っていたが、子供が自主的に興味を持ってこんな研究をするならば応援してやりたいとも思った次第。
https://www.shizecon.net/award/detail.html?id=466