ポンピドゥーセンターが全くの肩透かしで消化不良の気分だったのでギメ東洋美術館をハシゴした。実業家でもあり東洋美術収集家エミール・ギメのコレクションを母体にルーブル美術館の東洋美術部門が統合された国立東洋美術館。実態はルーブル美術館の東洋美術館別館。
世界の覇権を争った帝国。アメリカのメトロポリタン美術館しかり、大英帝国博物館しかり、ここフランスもアジアが近代化の混沌期にある中、国宝クラスの美術品を数多く入手している。悲しいかな、ベトナムや中国で見られる以上の作品がメトロポリタン美術館にあった。おそらく、ギメ東洋美術も。
この日はたまたま、日本美術の特別展が催されており興福寺の地蔵菩薩と仁王像の計三像が展示されていた。吹き抜けのホールに放射状に展示され、なんともカッコよく収まっている。
ライティングも完璧。暗闇の中に迫力ある筋肉造形が浮かび上がっていた。興福寺美術館の展示よりも上手なのではなかろうか。
柱の女人像は美術品として鑑賞したら良いのか、建築装飾として鑑賞したら良いのかわからないほど。造形が同じように思えるので心柱を鋳型で複製した石膏像で覆っているのだろうか。
この達磨も好きだな。陶器に象嵌で模写したい。
繊細な絵付けの上から豪快に釉薬を流し掛けるという、小心者には受け入れ難い作風の陶器。垂れすぎて絵が消されたら轆轤も飾りも一連の多大な労力が無駄になってしまう。窯出しの緊張感も格別だろう。もしかしたらその瞬間に高揚と陶酔を覚えるぶっ飛んだ作者なのかもしれない。
絵巻物かと思いきや西陣の着物の帯。
この美麗な「かな」が全て織られた意匠だなんて信じがたい。滑らかな曲線が全く損なわれていない。無論、正絹なわけで一体おいくらしたのでしょうか。
展示されていた日本美術のなかで最も気に入ったのはこの鷹だろうか。眼光の鋭さと存在感が格別だった。下地が黄ばまずまだ白かった頃はさらにコントラストが強く迫力があったに違いない。
他にも鎧甲冑や大きな有田焼、印籠、蒔絵箱など見事な作品があった。立派な屏風やら国宝源氏物語絵巻の一巻やら、そういうものもあるかと思ったが日本美術は限定的だった。倉庫には大量に眠っているのだろうか。