フィンランドの作家、トーベ・ヤンソンが産み出した「ムーミン」をテーマにした施設へ。同じく飯能の数km先にある「トーベヤンソンあけぼのこどものもり公園」とは全く別の3月16日にオープンしたばかりの商業施設だ。
ムーミン屋敷の中に入ることのできるツアーは1人1000円など、入場料に加えて追加料金が必要なアトラクションが4、5つある。なかなか強気な価格設定だ。
宮沢湖の端を往復するようにジップラインで湖を越えることができる。往復1500円の別料金。ムーミンとは関係ないが、午前中のうちに整理券が売り切れてしまう1番の認可施設の模様。
無料で見られるショーは暴力性からは無縁のほのぼのとして起伏がなだらかな話筋だった。セグウェイの使い方が斬新。
ハティフナット。そういえば、高円寺にも同名の童話メルヘンカフェがある。ニョロニョロという日本の通称よりもハティフナットという固有名詞が好きだ。テレパシーで会話をし、帯電して旅をする不思議な生き物。
案外充実していたのがアスレチック。
樹上の吊り橋を渡ってツリーハウスへ。さらに滑り台で降りる。
4階建ての木の城はボルダリングで登ったり、急勾配なチューブ滑り台で降りたり、難易度が高めな箇所も多々あり子供達の嬌声に溢れていた。
造形も可愛らしく、色彩豊かで夢がある。
細部までこだわったデザインの北欧おとぎの国。
ペダルで漕ぐ回転木馬はペダルの位置が低い割に径が小さく、脚が届く大きな子には漕ぎにくく、漕ぎやすい小さな子には脚が届かない困ったシロモノだった。結果、係のお姉さんが延々と引き馬のように引いて回していた。
2フロア吹き抜けのホールに迫力のあるジオラマ。
とても作り込まれていて、あ、これはあのエピソードの情景か、あそこにミイがいる、としばらく眺めていられる。
ほんの一部ではあるけれども、作者トーベ・ヤンソンの生い立ちを紹介しているコーナーもあり、内容が深かった。芸術家両親の元に生まれ、幼稚園ほどの年齢から描き始めていたトーベ。画家として評価もされつつあったが第二次世界大戦へと向かう世の中の潮流に彼女も無縁とはいかなかった。反ナチス、反ソ連、反戦を謳う雑誌ガルムで風刺絵を実名で描き続けてきたキャリアなど、ムーミンの登場人物や初期の作品に影が濃い理由も知ることができる。
ムーミンの世界観は単にほのぼの、かわいらしいというものではないはずだが、ムーミンバレーパークにはその「翳り」の魅力は感じられない。
ミイは34人兄弟姉妹の20番目の子だそうだ。
4月中旬には樹上のネットのアスレチック「ファンモック」もオープンする。彫刻の森の堀内紀子さんのネットの森が思い浮かんだけれども、これはフランスのグロワ島発祥でフランスから職人を招いて設計施工したものらしい。
それこそ、「おまえんち、おーばけやーしきー」「こらーカンター」とばかりにジブリ映画の台詞を覚えるぐらいにムーミン作品を愛している人にこそ楽しめる施設なのだと思う。ムーミン作品に馴染みがない人にはアスレチックパークとしては写真映えはするが規模は物足りないし、テーマパークとしてはアトラクションは少なめ。
ファンモックもオープンし、カヌー遊びと組み合わせたり、SL乗車体験やホタル鑑賞、キャンプなどと組み合わせて魅力が増す施設かもしれない。ムーミンバレーパークだけを目的として小旅行を完結させるには少し弱いか。