これも初期の頃の作で水受けがあるので室内、とりわけ仕事机の周りに植物を置きたい時に重宝している。
背景が暗いのもいい。縦横のバランスが「エケベリア」にうまく合わせて作れたと思っている。
8年ほど風雨に晒されて貫入が入ってきた。陶器にとっての生体認証、指紋のようなものだ。貫入が入っていくのを「器が育つ」と言ったりもするが、汚れと見るか、風情と見るかはその人次第。私はやはり、「おお、育ってきたな」と思ってしまう。
市松塗り分け。植わっているハオルチア「旧氷砂糖」は本来は爽やかな黄緑色と透明な窓を持つのだが、この株分けしたやつはまだ冬仕様。これから根を張り肥えていってくれるはず。
なぜだか案外、反応が良い鉢。植えたのは「姫春星」。作り手には余った土を使い切るために作ったような設計意図のない無造作な鉢も、人によっては面白く感じてもらえるらしい。礫砂漠や乾燥地帯に生える仙人掌や多肉植物のジオラマ展示みたいなものか。
副産物として定期的に作り続けていくと思う。
苔に「緑蛇」を植えたら爽やかな一鉢となった。焼成時に隣に置かれた作品の影響か、土肌に緋色が出た。こういうのは意図して再現できない。
緑蛇が重力に抗いながらのたうちまわって育ってくれると楽しい。
鹿の角がほぼ一周している。似たやつをもう一つ作ろうか。
辰砂にマンガンを流した小鉢に「明日香姫」。肩の角ばった鉢が定期的に作りたくなる。垂直面ばかりになりがちな植木鉢で平面を見せられる点で好きな形状だ。
最後は十二の巻。ある程度育ってきた株の下葉を切ってパイナップルのように仕立ててある。手前味噌だが、楽しめる形状だし滅多に見かけない仕立て方だと思っている。
薄暗がりの「瑠璃殿」
姫春星、明日香姫、十二の巻、瑠璃殿など女性的な、あるいは王朝文化的な名前が多いように思う。多肉植物はラテン系言語だと女性名詞だろうか。