ベトナム「ダナン」出張

ベトナムのダナンに仕事の会合で来た。

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3泊滞在する部屋はレジデンス棟の1室が割り振られた。大きなオープンカウンターのキッチンが付いていて、自炊もできる。

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若い時分ならばこんなに広い部屋を独り占めなんて、ヤッホーと浮かれたのかもしれない。今となっては、ここに一人で泊まるのかと思ってしまう。落胆ではないけれど、浮かれる要素もなく、淡々と受け止める感じだ。

過剰な広さは寂しさを強調しかしない。


入るなりいきなり走り回って、ソファの上で飛び跳ねて、靴下を脱ぎ散らかし始める子供達の賑わいがあってこその部屋なんだろうな。到着、30分で家族が恋しくなる。そうさせる部屋だった。

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白いリネンと控えめな装飾が高級リゾートホテルであることの自信の表れのような、空調の効いた寝室。

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3日間で一度も座らなかったソファが殆ど。

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家族を持つと孤独耐性が著しく損なわれるのだろうか。自分は妻に先立たれたら、急速に老け込んで衰える種類の人間なのかもしれない。一人旅行をあれだけ楽しみ、いつもつるんでばかりの同期や学友に対して冷めた視線を送っていたのに。

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朝8時から夜10時過ぎまで連日、隙間なく日程が詰まっている。休憩時間という休憩時間はネットワーキングタイムという名目になっている。それよりも早く起きてビーチに繰り出す元気はない。

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朝食でも、ディナーでも、社交的な自分を演じないといけない。笑顔を貼り付けて、入れ替わり立ち代り、様々な人と話す。時折、すれ違う自分の上司達に自分が隅で一人でいるところを見せてはいけない。様々な部署の人と関係を構築し協働できる協調性がある奴だと見せないといけないし、皆そうできているから一人でいると悪目立ちする。お偉方も遊びに連れてきているわけではないのだから、いろんな人達と話して交友を深めるのも仕事だ。


大袈裟なことではなく、誰かとたわいもない話をして場に溶け込んでいればいいだけの話ではある。

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私が一番億劫なのがバスでの長距離の移動だ。誰かが声をかけてくれて隣の席に座ってくれると、ほっとする。そういや、転校したばかりの頃や中学一年、高校一年生の頃なんてこんな感覚がなかっただろうか。いつだって根が明るくて友達がいなければ駄目かのような空気が支配していた。クラスの人気者になることが最も素晴らしいことであるかのような。一人で座っている人に対して、あいつは社交性がない、友達がいない、何か問題のある人のような視線が送られる。


そういえば、入学して早々、遠足でポツンと一人でお弁当を食べているように見える息子の写真を見て、締め付けられるような想いがした。だんだんと同級生の名前も聞くようになってきたので友達もでき始めたのかもしれない。別に友達がいなくて一人でお弁当を食べたって悪くはないんだよ、友達は無理に作るものではないのだよ、と言ってやりたいと思う。友達の顔色を伺い、同調して、つるまなくても気にならない芯というか、自分の柱のようなものを見つけて欲しいと思う。


私のベトナムの会合は仕事だ。友達作りに来たわけではない。くどいほどこれも仕事だから、と自分に言い聞かせる。

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シャンパンを手当たり次第に飲み散らかし、ノリの良い風を装って誘われるがままにプールに飛び込む。「いつも通りだな、楽しんでるね」と声をかけられた。カメラを向けられたらそこらの人と肩を組んで、イェーだかウォーだか適当に歓声を上げる。

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プールのもう片側で何かが盛り上がった隙にさっとトイレにでも行くかのような身のこなしで店を出てホテルに帰る車を捕まえた。

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楽しそうに盛り上がる人達を見て、こういうものを楽しめて、率先できる人の居場所なのだろうな、とは思う。装ってはしゃいでいる風のやつもいる。自分も誰かから見抜かれていただろうか。


皆んなが盛り上がるものが楽しめない。いや、ここに自分の求める価値観はないな、と改めて思わされた。それでも、今の自分の仕事はこの世界にあるし、子供の小さいうちは今の仕事が確実に稼げる。何かがもたげるたびに打算が頭の中を巡って、自分で自分を説得しようとしている。


良く言えば、折り合いをつけて大人に振舞っている。

悪く言えば、諦観の上で現状を必死に肯定しようとしている。


お父さんは社交的なフリをして頑張ったよ。明日は7時に車の手配をして、早々にこの場を離れよう。