朝7時にダナンのホテルを出て、フエへ3時間移動した後にカイディーン帝廟やミンマン帝廟を回り、王宮へ来た。流石に腹が減った。
王宮を入って右手奥に軽食を食べられる東屋があった。炒め飯を頼む。200円ほど。
具材も何も入っていない黄色の炒め飯だった。よく見ると、炒めた玉葱のチップスが混ざっているように見える。ヌクマムという魚醤やトゥオンオットというチリソースで味に変化をつけながら楽しむ。
黄金に輝くような200円。
腹ごなしを終えて周囲を見渡すと無数の盆栽が並ぶ盆栽園にいることがわかった。1000年続いた阮朝の時代からここで盆栽が並べられていたのだろうか。ベトナムでも盆栽は歴史があるのか、現代になってから中国や日本から入ってきたのか。
巨大な石卓には水が張られ、中央の岩を覆うように木が植わっている。榕樹のような根の張りかたをしているが、葉を見ると日本にもありそうな広葉樹だ。
私の自宅の中庭にこんな石卓とそこに植わる「乙女桜」もみじがあったならばどんなに風流だろうか。流石にこの巨大な鉢は運び込めないが、水を張った盆栽鉢は灌水の手間を減らし、もみじの葉を美しく発色させる名案に思える。
水の中にはグッピーのような熱帯目高が泳ぐ。強烈な暑さのベトナムで広大な盆栽園の鉢鉢に水をやって回るのは大変だろうから、こうして水を張った鉢があれば降雨任せにできるのかもしれない。
20年前の昔にアユタヤで見てからずっと実現させてみたかったことの一つがこれ。陶器の作品を木の根に抱かせること。降雨と陽射しに恵まれて成長が速い東南アジアならではかもしれないが、2倍、3倍の時間がかかっても良いので我が家でも取り組んでみたい。
この盆栽園で一番多く植わっていたのはこのアデニウムではないだろうか。酷暑に耐性があり、根や幹に水を溜めて肥大化するので乾燥にも強い。
懸崖仕立ての柘植を手入れしていた庭師さん。この庭の鉢を全て一人で手入れしているのだそうだ。これはボンサイかと尋ねると、そうだ、ボンサイ、ボンサイと嬉しそうに答えてくれた。
盆栽園の隅に築山がある。石段を抱え込むように榕樹が根を張っているその一景が何度も訪れたいものだった。自分の街にこんな場所があったら、犬の散歩に、何か嫌なことがあるたびに足を向けてしまいそう。
小さな祠。
掠れて輪郭を失いかけた龍の絵が一層、迫力を宿す。
あれ、お前さんは印度菩提樹ではないか。素知らぬ顔して異なる樹の根元に守られるように生えている。
築山全体が樹の根に抱え込まれたよう。
王宮の出口へ向かう途中でもう一株、素晴らしい榕樹を見た。
何か生命力に溢れている。腐敗と再生のめまぐるしい中で仙人掌が成長点変異を起こして綴化するように暴走したかのような根張り。
植物好きには楽しいフエ王宮だった。