阿佐ヶ谷というと、高円寺と並んで安い居酒屋が四方八方の裏筋に軒を連ねるイメージ。でも、広尾だの代官山だの行かずに近場の上等なレストランにもたまには行きたい。
妻が見つけて予約してくれた阿佐ヶ谷南口のフレンチレストランへ。
ラメゾンクルティーヌ。シェフがフランスで7年半修行し、一ツ星店で料理長をしていた同名を引き継いでオープンしたフランス料理の熟成肉を味わえる店だそうだ。
修行時代が纏められたブログにパリ14区のLe Severoで食べた熟成肉に感銘を受けたとの記述を見つけた。私もパリで3度ほど行った肉尽くしのビストロで勝手に親近感が湧く。いや、本業に加えて、週末にLe Severoで働いていたらしい。まさしく修行だ。
Percevalの「9.47」ブランドのカトラリー。ラメゾンクルティーヌの初代シェフ、イヴ・シャルルがシェフを譲り、オーベルニュで創り出したナイフだそうだ。料理の道で極めながらも隣接分野とも言えるカトラリー作りに出会い、シェフの道を捨ててカトラリー作りに没頭する。そういう人生と豊かな出会い、才能が眩しい。
アラン・ドュカスやアラン・サンドランスのレストランにも採用されている品とのこと。ちなみにこの店のシェフはアラン・サンドランスの魚部門のシェフもされていたようで魚料理の技術も一流なのだろうが、ご自身はやはり熟成肉が好きなようだ。
料理の説明は省く。真っ当に表現する術を知らないし、美味しいとしか言えない。
フランス出張中はごくたまに二つ星に連れられて行ったりもするが、仕事相手との会食で食事を楽しめたことはあまりない。プライベートで来て、ようやくこの手のレストランを楽しめるようになった気がする。
“肉の熟成は骨から切り放した時点で止まり、劣化がはじまる”の理論から、提供する直前に必要な分だけ切り落として調理しているそうな。鹿肉を頂いたが、文句無しに美味しい。Le Severoのようにドーンとした大きな肉塊を食べさせてもらいたい。
誕生日にとお願いしたケーキ。これだけを買いに来たくもなる味だった。
もう妻と出会ってからの人生の方が随分と長くなってきたのだよな。子供達の話をしていると、戦友のような気になってくる。
子供の頃は動物の番組が大好きで飽くことなく観ていた。今では興味がまるでない。植物や陶器など全く興味がなかったが、今はあれこれ興味が惹かれる。好き嫌いは理屈ではないからこそ、好きでい続けられることは幸せなことだ。
皿が素敵だ。不揃いで客それぞれが異なるアンティーク皿で供されるのだけれども、どれも素敵だ。
また、何かのお祝いに食べにきたい。歳を重ねたということ以外にこの店で祝うべき何かを達成したい。