コロナ外出自粛生活3か月目。最近、酒量が増えている。
コロナ禍における飲食店の営業停止や大量閉店で業務用の日本酒消費が大打撃を受けているそうな。酒蔵によっては飲食店向けの一升瓶を個人消費向けの四合瓶に詰め替えなおして出荷しているところもあるらしい。一般に知れ渡っていないが日本国内の日本酒製造免許の新規発行は永らく認められていない。ようやく政府も海外での日本酒需要の増加を受けて輸出を専業とする限りにおいて新規製造免許の発行を行うらしい。つまり、国内向けに廃業しても開業はできない。
国内市場は依然として減少傾向。酒蔵は零細の家族経営も多い。体力もなく、一旦廃業したらもう二度とその味は戻らない恐れもある。そして私の好きな日本酒は神戸に多い「〇鶴」などのような紙パック酒まで大量生産しているような蔵元ではなく、山廃仕込みなど手間暇をかけた伝統技法を用いて比較的小規模なタンクで製造している蔵の酒が多い。平成9年から27年までの18年間で700社、全体の1/3近い醸造所が廃業した。コロナ禍でも加速する恐れが強い。蟻の一噛みのような効果かもしれないが、好きな酒蔵のお酒を少しでも飲み続けたい次第。
飲んだ感想を備忘録がてら、それぞれ⭐︎をつけてはみた。あくまでも善し悪しではなくたまたま食べた食事との飲み合わせの私の「好み」に過ぎない。同じ銘柄でも温度や合わせる食事次第でそのお酒の真価は引き出せるし、私は引き出す工夫をせず漫然と飲んだ上での好みと感想に過ぎないことは予め断っておきたい。
まずは山梨の「青煌」で知られる武の井酒造のお酒。この酒蔵は日本全国平均の製造石数が380石に対して80石(一升瓶8000本)と最小規模クラスの酒蔵。つるばら酵母と八ヶ岳山麓の伏流水を使って仕込んだ美味しいお酒。消費者、酒販店、蔵元の割り勘で一本当たり100円が医療従事者に寄付される企画商品を作って出している。私はてっきり蔵元支援のために100円が上乗せされた商品かと思ったがそうではなかった。なんたる心意気。それでもってお酒自体も食中酒に最適な純米美酒。あっという間に売り切れていた。こういうお酒の企画品をもっと出せ。むしろ、100円を消費者が負担し、医療従事者と酒蔵あるいは米農家に寄付するというのでも良いと思うのだが。大変な状況下にあろう小さな酒蔵が医療従事者を支援しているのに、酒飲みが酒蔵を支援しなくてどうする。
☆☆☆庭の鶯の春限定どぶろく
甘味のある酸味で目から鱗の美味しさだった。1升瓶で買ってしまえばよかった。無濾過生原酒よりも発酵が進んでおらずアルコール度数は7度。ビールのようにゴクゴクと飲めてしまう。昼間からのんびりと肴もなしに飲むのも良い。
☆☆上喜元「仕込第五三号」
佐藤正一杜氏「渾身」。ハズレのない食中酒。
食中酒として私の好みど真中の酸味と旨味が感じられ、吟醸香が立ちすぎずに料理の邪魔をしない一品。お腹が満たされた後で酒だけを杯を重ねる段階になっても改めて美味しいと思える食中から食後まで楽しめるお酒。しかも720mlの四合瓶で1300円という手頃さ。こんなにコスパの良い銘柄は少ない。常備したい。
☆☆☆神奈川の「残草蓬莱」特別純米槽場直詰生原酒
神奈川にこんな美味しいお酒があったとは灯台下暗し。白麹で仕込んだお酒なのだそうだ。
搾ったお酒を直詰めしており、爽やかなガス感と果実のような甘酸っぱさ。洋食に合うのだそうだ。確かにイタリアンのつまみ盛り合わせと飲んだら最高に美味しかった。翌日、餃子とともに飲んだ際に昨日ほどの美味さを感じなかったのはガスが抜けたからなのかと思ったが、おそらくはマリアージュの問題。
万能なお酒ではないのかもしれないけれども、上手く合わせられるととても幸せな気分になれる日本酒。
⭐︎⭐︎⭐︎東京の「屋守」純米中取り直汲み生。
阿佐ヶ谷の柳瀬屋の大将が東京で一番美味しいと太鼓判を押すだけのことはある。微発泡の甘酸っぱい旨い酒。絞り始めと絞り終わりの部分を混ぜずに真ん中部分の澄んだ酒だけを取り、直瓶詰した贅沢品。それでも720mlで1700円の買い求めやすさ。志村けんさんの地元の蔵で愛飲した銘柄だとか。東京にもこんなに美味しい日本酒があるとは、日本酒界は奥が深く広い。 店に並んでいるのを見かけたら即買いの一銘柄。
☆☆篠峯純米吟醸
阿佐ヶ谷の柳瀬屋の大将が好きだそうで店頭に造りの異なる篠峯が6銘柄も並んでいる奈良のお酒。開栓するとシャンパンのようにポンと音がするほど発酵時の天然の炭酸が残っている。しっかり酸味が効いており美味しい。同時に買った屋守が好みすぎたので評価に差をつけてみたがこれはこれでとても美味しいし食べ合わせが違えばさらに美味しく飲めた予感。
「本酒をより楽しんで頂く為には、料理とのマリアージュや適温での燗、生酒も含めた熟成など、魅力的なソフトが大事だと考えています。 変化する事の良さを日本酒で感じて頂きたいと思っています。変化する日本酒は難しい、だからこそ日本酒は楽しいのです。
これからの日本酒は酒蔵を出てからの変化をどのように飲み手の方に伝えていくかが問われてくると考えています。四季を通じて表情を変える生酒は勿論の事、生モトに代表されるような熟成によって美味しくなるお酒や燗をする事によって真価を発揮するお酒、料理との相性で一層花開くお酒など、酒蔵だけでは完結しない日本酒の魅力を伝えたいとの思いから、限定流通商品の「篠峯」を1999年から立ち上げて販売しています。」蔵元千代酒造のWEBより引用。
☆☆秋田の人気酒蔵「新政」の令和一年醸造酒
生酛純米造り、六号酵母使用の木桶発酵。2019年収穫の「改良信交」という秋田県産米を使っているのだそうだ。
ああ、新政だと思わせる、甘味のある味。こういう味のお酒を飲みたいときは新政が浮かぶほどEquityが確立した印象。私の好みとしてはもう少し酸味があってもいいな、と思う。
☆梵 純米大吟醸「艶」
ラベルに艶がある。大吟醸酒としては香りは抑え目かもしれない。オンライン飲み会でアテをつつきながら、芳醇な香りを楽しめた。アボカドと明太子のペーストだとか、脂っこいものと良く合った。
☆「真澄」すずみさけ
昨年、諏訪の蔵元を訪ねてさらに愛着が湧いた真澄。さらさら、するすると飲んでしまう夏酒。
長崎のお酒。田中六五という福岡のお酒もある。そういえば将棋の加藤一二三名人も福岡生まれなので「苗字」+「数字」は九州に多い名前のパターンなのだろうか。しかし山本五十六は新潟生まれか。よくわからん。
鈴木七七とか佐藤四六四九とかこの名前の眷属が増えて欲しい。
お味はというと、よく見かける美味しい芳醇なお酒で個性が際立っているという印象ではないかも。いや、美味しいのだけれどもね。
5月は夏酒が出始める季節。夏酒はスッキリと飲めるので酒量が増えてしまう。