鳩の巣渓谷

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高円寺から各駅停車で70分。10時前には奥多摩古里駅に着き、ハイキングコースを歩いて鳩の巣渓谷を経て白丸ダムへ。2時間ほどで歩き終わってしまい、少し物足りない距離ではあった。

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1時間で新宿新都心のビル街から山だらけの景色へ。あちら側では毎日、コロナ感染者数が150人だの200人超えだの騒がしく、10月30日付けの新聞では早期退職を募る企業が72社1万4000人にも上るという。

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40階建のビル群に効率よく詰め込まれた人達がコスト削減だの人員減だの巻き返しキャンペーンだの、わあわあやってる間も奥多摩の川は同じ眺めなんだろう。


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バブルの時代、日本人が世界中で我儘だった頃も、バブル崩壊後に悲壮感に打ちひしがれて不景気への愚痴が挨拶がわりだった頃も、アベノミクスで実は経済は成長し続けてあるところには金が余ってた時代も、そしてコロナで経済が沈む今も。


それでも世界は終わらない。さほど変わらない、影響を受けにくい生活というのもある。

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あの騒々しさの中に身を置くのも、その外に出ていくのも自分の判断なのだよな。

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私はなぜ、あの喧騒の中にいるのだっけ。何を求めて、何に喜びを感じてあの中にいるのだっけ。そうではない選択肢がありながら、果たして能動的に選んでいるのだっけ。

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数年前にできたという魚道。この高低差を魚が登るとはなんたる苦行か、全く。そんな上流に遡らずとも産卵して繁殖できるように進化できなかったものか。魚たちも射精すること、産卵することへの執着を捨てたら苦しみから解放されるようにも思う。イワナや鮭のような遡上する魚の中にも、他の魚と同じように遡上しない個体もいるらしい。

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遡ることを放棄した魚はヒレをボロボロにして登った挙句に力尽きることもなく、より長生きできるのだろう。それが魚本人にとって望むことなのかは知らないが。

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人生はすべからく苦しいと仏教は説くそうで、過剰な期待を持つから苦しむとのこと。幸せな人生を送らなきゃという脅迫概念に捉われてるとも考えられないか。


またまた、案の定、諦観と達観の違いがわからないという思考の袋小路にたどり着く。

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何に突き動かされて自分はより良い収入、裁量権、仕事のやりがい、住環境、食、趣味、家族を求めているのだろう。私が魚に対して、そんなに頑張って魚道を登らなくてもいいのにと思うように、私自身にも捨てていい執着が沢山あるような気もする。

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目的意識を持って働きたい。どうでもいいものは、どうでもいいと再認識しておきたい。求めるものに付随して譲歩すべきことも多いが、流されるのではなくあくまで選択的に譲歩していると自覚しておきたい。

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渓谷に架かる吊り橋のたもとにある見晴らしの良いカフェ「ぽっぽ」。鳩の巣渓谷だからぽっぽなんだろうね。

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窓際にカウンター席が一列並んでいて、渓谷を見下ろしながら食事ができる。渓流の逆巻く白波をぼーっと眺めるだけで時間が経つ。


炎、波、渦。見るだけで思考停止になれるものたち。