ようやく、家に持ち帰った陶鉢。
水面から立ち上がった羽化途中の蜻蛉、あるいはヤゴだったもの。体軀にウシアブ的要素が混ざってしまっている。
蜻蛉は近くで見るとなかなか凶悪な面構えで、あのサイズの虫の中では絶対的な捕食者だったりする。後ろに引かないから「勝ち虫」と武士の中で縁起かつぎされたが、実際は後ろにも飛べるらしい。飛翔能力は虫の中では頭抜けて高く、急発進、急停止もでき、ヤンマ類はスズメバチすら捕獲する。蜻蛉は極楽蜻蛉などという長閑な存在ではなくて、蜻蛉のサイズ目線で見たら畏怖する肉食の獣だ。そんな要素も形にしたかった。
蜻蛉、とりわけオニヤンマは飛ぶのも速く捕獲が難しい。縄張りを持ち、同じ飛行ルートを巡回する性質があるため、飛行ルートに待ち伏せして網を振うのが捕獲するコツなんだそうだ。
翅が蜻蛉よりもウシアブになってしまった。キメラだな。蜻蛉とてボウフラのように水面に起立羽化はしない。
細部はいくらでも作り直したくなる点はあるが、総合的には満足な出来。飾った一角を異世界な空間にしてくれる雰囲気がある。鉢だけでは駄目で、この植物と合わさってこそ。
この水面から浮かび上がるイメージで作りたかったのだ。翅は蜻蛉のものだと後方に体に沿っては折り畳めないからウシアブのようでないといけない。しかし、蚊やウシアブの頭と胴だと部屋に置きたい容姿ではない。そんな作者の都合を合成した産物。
シルバーブルニアも、理想的に収まってくれた。この植物以上に菌糸、胞子嚢のように見える植物を私は知らない。
花言葉は「情熱」、「小さな勇気」だそうです。
しばらくはドライプランツを挿して飾ろうかと思う。水面部分のおかげでかなり頭でっかちな重い植物を挿しても安定感抜群。飽きたら、水抜き穴も開けてあるので土を入れて何かひょろひょろとした多肉植物を植えてみても良い。