お蚕さまの繭化 続々

 

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朱塗の御膳に載せるとそれこそ、「お白さま」という風情。

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透明アクリル板でこの通り観察もしやすいが、実際には蚕は桑の葉のある場所から全く離れず逃亡する恐れがないので蓋は不要なくらい。

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箸は箱と蓋の間に隙間を作るためのものなのだが、まるで食事のようでもある。宇宙食の候補素材として注目される昆虫食の中でもとりわけ蚕は栄養価が高く水分量も多いらしい。しかも九州大学が蚕を苗床にコロナワクチン培養し、食べることでワクチン接種が可能になる研究を臨床実験段階まで進めているとのこと。

 

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イキッているお蚕さま。もうこの頃になると息子は全く平然と素手でひょいと持ち上げて新しい桑の葉に移してあげたりするようになった。

脇に気孔が並ぶ様もわかる。こちらは終令幼虫でさらに葉を存分に食べたら繭作りに入る。ちなみにこの頃になると桑の葉を食べる量は凄まじく、頻繁に糞をする。何度か糞をする様を観察できたのだが人間に例えると人間が赤子の頭の太さの糞を数十分おきにするようなイメージだ。なかなかの迫力。しかも出す時点でかなり乾燥していて糞が落ちると乾いた音がする。水分は葉から全て摂取し、吸収し尽くしている様子。

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二段重網システムがとても機能している。下段の糞受けには大量の糞。蚕を飼育するのには気温は25℃前後、湿度は70〜80度が理想だそうだ。特に終令幼虫は「風で育てろ」というぐらい通風が肝心だそうだ。箱の中は気温24℃、湿度もこの連日の大雨にも関わらず80度と完璧なコンディション。

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先に繭作りに入ったものが2頭。まだ中が透けて見えるのだが、内側に幾重にも繭を吐いてやがては真っ白な繭となる。繭作りを始めた個体は体色が少し黄色になり、体が縮む。

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そして羽化するための完全シェルターの出来上がり。

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どうやらこのペースだと夏休みに入る前に全て繭になってくれそうだ。

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 残念ながら亡くなってしまった個体も3頭いる。同じ環境で同じものを与えていたのに育つ個体と死ぬ個体に別れる理由はわからない。「終令幼虫は通風で育てろ」と言われる時期に連日大雨だったのは負の要因で弱い個体は湿度にやられてしまったのかもしれない。


郷土博物館の学芸員さんの話によると、養蚕家の蚕飼育は1年に1サイクルだけだったらしい。春から秋にかけて2サイクル、あわよくば3サイクル近く回せるように思うのだがなぜ1サイクルだったのか。梅雨だと湿度が高すぎて、晩夏だと暑すぎるからかもしれない。


現代ならば温度も湿度も管理した無菌環境で通年で育てられるようにも思うのだが採算は合わないのか。