蝉の幼虫鉢が焼けた。蝉への釉薬の掛かり方は絶妙にちょうど良い。凸凹の高い部分は下地の黒土が充分に透けている。
蝉の翅の模様も潰れずに残った。
翅を伸ばして幼虫から成虫に羽化する狭間の状態。
蟲と植物の混ざった冬虫夏草という存在。
丸く無機質な土台から有機的な蝉。
死と生の入り混じった状態。
どちらともいえない曖昧さの中にあっても際立つ存在感のようなものが何かあるのではないかと探した。
それにしても芸術的造形な蔓よ。一筆書きで遊んで線を引いたような形。これは植えてある藤稔という葡萄の蔓なのだが、これは良い蔓だぞと昨年秋に採取して後生大事に保管していたやつ。
枝や石を拾っては宝物のように持ち帰るのは幼稚園児と素行が変わらないかもしれない。しかしよくよく考えると幼稚園児のそれは石ころは価値がないという知識をつける前の先入観に惑わされない審美眼なのかもしれない。
夏の間はこのまま乾燥した植物を挿しているだけでも良いが、やがては実生のサボテンを植えたい。
秋の成長期に植えたら上手く根付いてくれるかもしれない。しかし幼苗は小さく弱いのでこのような乾燥しやすい鉢への移植は難易度が高い。
満足度の高い鉢が焼けた。