このブログを見てくださっているayumittさんという盆栽や写真を趣味にされている方から植木鉢を作って欲しいとの注文を頂いた。育ててらっしゃる盆栽の真柏を植える為にありふれていない特別な鉢を求めているとのこと。
植物愛溢れるブログをいつも書いてらっしゃる方でかつ死んだ団子虫などの一般ウケしない私の嗜好をお気に召してくださる珍しい方。販売目的の作品作りは考えていなかったが私が普段作っているものと方向性が大して変わらないもので構わないようなのでお引き受けすることにした。
仕様
- 岩の上で死んだ団子虫を苗床に真柏が生えているかのように見える植木鉢。陶蟲夏草鉢と岩付盆栽を合わせたイメージ
- 傾いた鉢に斜めに真柏を植える
- 岩肌に苔を活着させる
- 根上り、根洗いの要素を加える
- 岩は内部をくり抜き一体化させて団子虫の体内では不足する土容量を補う
詳細の検討
- 団子虫は白土を使って死後乾燥して白化したイメージにする。シャリが出る真柏に呼応させる。白い釉薬を掛けるかは要検討。
- 岩は黒土を用いる
- 岩の割れ目に黒系釉薬を入れて割れ目を強調する。
- ところどころにシリコンカーバイドを添加した釉薬を筆塗りして苔を活着しやすくする
- 団子虫の外にも根が這うように、その根が岩の中に入れるように穴を空ける
- 岩の下部に根洗いのように根が飛び出ているようにみせるべく穴を空ける。水抜き穴兼用
- 高さが出るので岩部分の重心は低めに作る
1日目 団子虫成形
真柏は「神(ジン)」、「舎利(シャリ)」と呼ばれる生きながらも部分的に枯れて白化した枝や幹が大きな魅力の一つだそうだ。ジンシャリで真柏盆栽の価値が変わると言っても良い。当てている漢字を見てもわかるように盆栽の中でもとりわけ真柏には多分に宗教的死生観が投影されているように感じる。松柏と並び称されるだけあり、岩肌で風雨に晒されて育った山採りの真柏は盆栽の中の王なのだという。
ayumittさんのはまだ若い真柏でシャリはないようなので願わくば団子虫の鉢が遠目にはジンやシャリのように見え、真柏が育ってシャリが生じた際には一体化したように見せられると良いのではないか。
幸にして再生した粘りの弱い信楽白土があったのでこれを使ってボロボロと風化して崩れつつある土の質感を出したい。土で作る団子虫だからこそ、滑らかではなくひび割れて乾いた表情を出せればと思う。土に粘りがないので脆く、素焼きまで無事に辿り着けるか不安は大きい。通常よりもゆっくりと乾燥させることを心掛ける。
多肉植物で茎を植え込むだけならばもっと閉じて丸まった団子虫形状にして茎を差し込むだけの穴を開ければ足りる。しかし植えるのは真柏なので幹の周りの根上がりも魅力として出せるように開放部分を大きくとることにした。
団子虫の眼は写実的にするとあまりに目つきが鋭く細くて可愛げがないのでもうすこし大きく丸くデフォルメする。触角が脆いので次回にもう少し乾いてから口吻周りを整えることにする。