真柏のための陶蟲夏草鉢の注文制作2

2日目 台座作り

 

真柏の最高峰は糸魚川産の山深くの岸壁にへばりついて風雨に晒されて過酷な環境で育った、葉が細かくジンやシャリの多い古木だという。

 

真柏の魅力は土の少ない岩肌でも乾燥と風雨に耐えて育つその強靭な耐性

そして部分的に枯れながらもまた枝葉を伸ばしていく、その死を抱えながら生を営む生命力

 

そんなふうに私は理解した。ありがたいことに乾燥に強く風通しが必要であること、岸壁のような土が少ない環境でも育つというのはかなり鉢作りにはありがたい特性で私の鉢と相性が良いと言える。

 

おそらく多肉植物との違いは日本の山深くに自生するので朝晩の霧や降雨で水分を得る頻度は高いのだろう。盆栽で真柏と呼ばれるものは植物学的に深山柏槇とも呼ばれる。頻水速乾の鉢を目指すと良さそうだ。

 

真柏は懸崖仕立てにされることも多い。岩付き盆栽にされることも多い。ジンシャリの生じたような古木はそれでも良いのかもしれないが、まだ数年の若い苗木ならば岩付き風に見えても中にしっかりと土が入っていて根張りできる植木鉢は大きなメリットがあるかもしれない。

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土塊でバランスを見てみる。掌に入るぐらいの団子虫のサイズということなのでそれを乗せる台もそれなりの大きさになってしまう。可愛らしい豆盆栽ではなくかなり存在感のある鉢になりそうだ。

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ある程度は黒土など富栄養で水持ちの良い土を使いながらも湿気が籠らないような鉢を目指したい。水が貯まらないようにする。壁面に通風穴を複数設ける。

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中を荒く刳り貫いた後でドライヤーで表面を乾かし、表面に表情をつけていく。

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さらに中を刳り貫いて薄くし、団子虫を嵌めたり外したりしながら形の調整を重ねて大体の形は出来た。真柏の植込み、表面に張った苔、岩の底から垂れて露出した根。それらが揃えば「こんな植木鉢見たことない」「どこでこんなの売ってるの」というようなかなり個性的な特別感のある鉢になりそうだ。100人に1人が喜んでくれれば良い。

昔作ったような瓦礫鉢の作り方だと岸壁に巨大団子虫が乗ってるようなサイズ感が狂った感じになってしまう。拡大ディオラマに見えるように崩れた土斜面の断面に小石が混ざっているように見えるぐらいにした。もう少し低くすることもできるのだが、試しに下を隠して低くしてみると岩肌に逞しく生えている風情が無くなってしまう。ここは縦方向に嵩張るがこのままで行きたい。台風の際には取り込むなりの管理が必要かもしれない。

 

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左側台鉢の表面に苔を張ることを想定している。テグスや黒木綿糸で苔を抑えられるように糸を巻けるような石の出っ張りの配置と形状にした。苔が生したらなかなか私好みの鉢になりそう。団子虫の一部まで苔が覆ったら最高。

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団子虫と岩の間に隙間を作った。乾燥時の収縮率が黒泥土の方が13%、信楽白土も13%かそれ以上のようなので問題はなさそうだ。一部の根をこちらに迂回して下の土に入っていくようにしたら根が団子虫を抱き込んでいるような表現も可能になる。真柏は枝挿しでも株分けしやすいそうなので、切った枝をこちらから挿して複数株仕立てにしても面白いかもしれない。

 

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こちらの穴からメインの真柏を植え込めるようにした。

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様子を見ながら2週間ほどゆっくりと乾かしていく。まずはムロで1週間ほど乾燥して様子を見て、その後は外に出して芯までしっかりと乾燥させる。問題は乾燥後に素焼きするほどに作品が溜まっているかどうか。小窯を私の作品だけで満杯にするまで他の作品作りを急がないといけないかもしれない。

 

黒泥土 1kg

作業時間 2時間