梅品種展覧会「梅里公園」

朝のジョギングで高円寺の環状七号線沿いにある梅里公園に立ち寄った。

 

コロナ禍がなければ2月には梅祭りが行われ、甘酒、梅干、饅頭や薄茶の出店で賑わうらしいが今年も中止。それでも梅は例年通り美しく咲く。

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公園の入口には立派な枝垂れ梅が立つ。まだ三分、四分咲といったところか。
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これが満開になったらちょうど街灯もあるので夜桜ならぬ夜梅も見事そうだ。暇なら夜の散歩にまた来よう。
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流れるように落ちる枝は風情に富む。
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「呉服枝垂」という淡紅八重咲の野梅系園芸品種だそうだ。このように品種名の札が付けられているのはありがたい。公園全体がまるで梅品種の展覧会のよう。

 

野梅は真面目な話、「ヤバイ」と読む。梅愛好家は「これってヤバイ系?」「それもこれもヤバイ系っす」みたいな会話をするわけだ。他にはヒバイ系、ブンゴ系がある。声に出すなら野梅系が楽しい。

 

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これは好みかもしれない。
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五花弁の梅。かねてから思っていたのだが八重咲きの梅は図案化しても梅に見えない。八重咲きは量感は豊かかもしれないが梅らしい花姿は一重咲きではないだろうか。それでいて濃い紅。
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「佐橋紅」という濃紅一重咲きの杏性園芸品種だそうだ。杏性というのは豊後系梅で枝が細く葉は無毛で小さく、枝は灰褐色の杏の形質が強く出た系統だそうだ。


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見事な蕾っぷり。建物の影になっている株は開花が遅いようだ。
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「烈公梅」は紅一重咲きの野梅系園芸品種だそうだ。勇壮な名前なので期待したい。


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こちらは緋色が見事な梅。
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密集して咲くと景色が彩られる。
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「鹿児島紅」は濃紅色の中輪八重咲きの緋梅系園芸品種だそうだ。

 

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お、良い形の花だと思うとそれは大抵、一重咲きだったりする。
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花弁の形を認められる姿の方が好みだ。
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「大盃」は紅色大輪一重抱え咲きの緋梅系園芸品種だそうだ。なかなか酒飲み好みのめでたい名前。


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もう片方の公園の入口そばに咲いていた満開の梅。こんなに枝にびっしりと咲くと奇妙に見えてくる。
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作り物のような不自然なほどの花付き。
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「見驚」は淡紅の大輪八重咲きの野梅系園芸品種だそうだが、そんなに淡くもないし、大輪でもないような気もするのだが基準がよくわからない。花付きの良さを特筆すべきだと思った。見て驚くという名を付けられた「見驚」。納得がいく。

 

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梅は花の裏から見るとこんなに妖艶だとは知らなかった。萼の濃紫が魅惑的。幹に寄りかかって花を裏から眺めるという新しい楽しみ方を発見した。
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「未開紅」は淡紅八重抱え咲きの豊後系園芸品種だそうだ。抱え咲きとは花弁がスプーンのように湾曲した形で咲くことだそうだ。

 

梅里公園にはまだまだ取り上げていない梅品種が無数にあった。あまりに多くなりすぎてしまいそうなのでもう一つだけ載せておく。梅里公園の奥のかなり老朽化した集合住宅の脇に咲いていた梅こそが一番気に入った品種。

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どうだろうか。これぞ梅という輪郭をした容姿でありながら枝に重なりすぎず、疎になりすぎず連なるように咲く。私はやはり梅は一重咲きが好みだ。
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廃墟然とした背景に咲くのも情緒がある。
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品種名も強烈な印象。誰がどこで作出した品種なのだろうか。江戸時代の古くから盆栽に好まれた品種だそうだ。
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あちらこちらに顔を向けず、同じ方向に顔を並べて連なる愛嬌。エグザイルのチューチュートレイン的なユーモア。
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そんなわけで勝手にランキング

特選 「米良」ヤバイ系

二選 「佐橋紅」

三選 「呉服枝垂」ヤバイ系

四選 「大盃」

五選 「未開紅」

一重咲き、枝垂れの順に好きなようだ。

 

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埋め尽くすような一面の梅林などはないが、一株一株の品種の違いを楽しめる梅里公園。高円寺周辺で一番の梅の名所と呼んでもよいのではないか。

 

カップ酒を買って無人の夜に街灯に照らされた梅を見に行きたい。芝生に座って梅を見上げて。