佐賀3日目 伊万里の秘窯の里

  • 大川内山は鍋島藩直営の秘窯で隠れ里の雰囲気は必訪、必見。
  • 花木に彩られた鍋島藩窯公園の散策も楽しい。
  • 30ある窯元はどこも作品の説明を丁寧にしてくれてとても勉強になる。
  • 単線1両ワンマン運行の松浦鉄道の金武駅途中下車の旅も楽しい。
  • 天気が良ければ山と川と広い空の下を歩ける。
  • 古伊万里酒造は近年評価の高まりつつある老舗蔵。蔵元限定販売品もある。
  • 白華窯を訪れればギャラリーに出回らない吉永サダムさん作品が買えるかも。
  • 焼物三昧度合いが増してくる。大川内山や松浦鉄道沿線は窯元巡り、作り手巡り。一方の有田は作品を販売するギャラリーや美術館巡りが主になる。
  • 有田の内山地区の街並みは明治大正時代の建物に関しては全国トップクラスの保存度の高さ。
  • 「ひとふし」のちゃんぽんが美味しい。2晩連日食べに行ったほど。

 

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唐津から伊万里へは1時間に1本で所要時間も1時間ほど。

伊万里駅からさらに2時間に1本しかないバスに乗って大川内山へと向かう。昨晩の飲み屋の主人からもレンタカーを勧められたが不便極まりないが片道170円で済むのでバスで向かう。
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17分ほど田園風景の中を揺られて奥まった山の中の集落に着いた。
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ワクワクするような「隠れ里」感に溢れている。一子相伝の血継技能を伝えていて、外部と交流の許されない里だが今にも信長が滅ぼしにくる、そんな歴史空想小説に登場しそうな里。

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そんな空想も昔はあながち誇張ではない秘窯の里だったようだ。磁石の中でも上質なものが融通され、佐賀藩直営の藩窯として技術漏洩が厳しく禁じられ採算度外視で良品を追求したのが大川内山の窯だという。
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切り立った山々に遮られたような集落。
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もう磁器制作以外にすることの無い集落だ。約30の窯元があるという。

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窯の煙突がとても映える。
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尖った山を背景に青山窯の煙突の見える光景が観光ブックやパンフレットに載る定番の一景。

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集落内の橋はどれも伊万里焼で装飾されて美麗。
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水場に巨大な三連の鹿威しのようなものがあった。
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時折、大きな丸太が傾いてザザッと水が流れる。
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上を見ると臼になっていることがわかった。水流と木の重さを使って磁石を砕くのに今も使っているらしい。
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伊万里焼の鐘が時折高い澄んだ音を鳴らす。
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窯元にはかつて使っていた穴窯や今も使っている登窯をよく見かける。
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麻の葉模様のタイルも伊万里焼。
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そして祀られる白蛇様も白磁。なんだかこういう造形も作りたくなってきた。祀る蟲といえば何だろうか。蚕が真っ先に浮かぶが、昔は揚羽蝶の幼虫が祀られる地域もあったと聞く。

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公園のような一画もあって伊万里焼の染付け破片を貼り付けた突起のようなオブジェがあった。

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こちらは中央アルプスと富士山だろうか。
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里の入り口の橋も陶片で青海波がモザイクで描かれ

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陶板で鳳凰と龍が装飾されていた。
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陶工の墓も素通りはできない。
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かつては自分の名前で作品を作ることなどできなかった。何代目柿右衛門だとか陶匠の名を冠して作品を作れるようになったのは現代の話だ。江戸や海外に渡った伊万里焼の名品の数々も名前すら残されていない陶工の手による。藩窯の鍋島焼ともなると一層厳しく統制されて磁器以外のモノが里の外に出ていくことはなかった。そんな陶工の800基近くの無縁墓がピラミッド状に組まれて供養されている。
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この地に生まれて焼物に興味が持てなかったならばしんどいだろうな。職業選択の自由のない江戸時代は大なり小なり一緒だろうが。職業の自由、移住の自由を自分は目一杯味わっているだろうか。
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綺麗に整備された登窯。
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ここ大川内山と伊万里駅をつなぐ公共交通機関は2時間に1本のバスしかない。2時間では全てを回るにはとても足りないが4時間いるには少し時間も余る。4時間いたお陰で隅々まで散策できた。
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あちらこちらが伊万里焼の陶片で装飾されていてそれを見つけて回るのも楽しい。
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蕎麦猪口を蒐集するのは焼物好きの一つの定番だけれども私は3〜5勺の酒盃を集めてこのような木組み棚に並べたいと思っている。そうなると棚も自作するか特注しないといけない。

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大川内山から伊万里駅に戻り、金武駅で降りて古伊万里酒造へ。

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無人駅を降りて、15分ほどの距離を歩く。空が広く、暑すぎもせず最高に気持ちが良い。
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何がどこから飛び出すのを注意しろというのか不思議なほどの見通しの良さ。

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そして古伊万里酒造に着いた。コロナが蔓延してから酒蔵を訪ねても試飲や酒蔵ツアーなどがなくなってしまって残念極まりない。
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そうなると残りの楽しみは蔵元でしか販売していない品、東京では手に入らない品を探すこと。

伊万里焼きの磁器に入ったカップ酒なんてものが売られていた。しかも酒蔵にある絵皿を元にして図案職人にアレンジしてもらっているのだそうだ。
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十数年ぶりの新作が左に写っている2つの絵皿をモチーフにしたもの。
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今回は協力してカップに絵付けしてもらう絵付け師を探すのがとても大変だったそうだ。それもコロナ禍の影響かどうか。

商品化された磁器は手書きではなく転写による。この新作はセット売り5500円のものでしかまだ販売していないと言うので単品売りもしている古伊万里酒造なので古伊万里紋様の赤と緑の草花紋様柄のものを買った。

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古伊万里酒造から金武駅に戻る途中、4分ほどの距離にある白華窯で吉永サダムさんの工房を拝見して作品を購入し、有田のゲストハウスへと移動した。

 

ゲストハウスは有田駅よりも上有田駅のほうが近いのだが有田駅松浦鉄道からJRに切り替わり、乗り継ぎも悪くて40分近く待たなくてはいけないようだったので2.2kmを歩いた。

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もう「江戸東京たてもの園」と見間違うほどの美麗な木造建築が立ち並ぶ。
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区域全体の保存性の高さは類を見ない。
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京都ですら歯抜けになっていて飛び飛びに古い建物が散財する有様なのでここまで軒を連ねる景観は見事としか言いようがない。
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有田地元の人が他の有名な焼物の産地も有田の街並みのようなものかと思っていたので信楽丹波を訪れてがっかりしたと言っていたが、有田のレベルが高すぎる。
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売物件が出ていたのだがなんと500万円。延床面積150㎡とそれなりの広さ。リフォームにも500万円は覚悟しておいた方が良いのだろうが、それでも1000万円の破格。真剣に子どもの巣だった後の移住先として検討したい。ここが500万円とは外国人に見つけられたらポケットマネーで即買いされてしまうレベルだ。危機感を覚える。
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時代が止まったかのようや街並み。

 

晩御飯は徒歩数分のちゃんぽん屋さんでちゃんぽんと焼飯を堪能した。佐賀ちゃんぽんは長崎ちゃんぽんに比べて具に海鮮が入らないとのこと。