- 日本の磁器のはじまりの地は作陶する者にとって訪れておきたい聖地
- 陶祖李参平の人生に想いを馳せる。自伝小説か何かないものか。
- ポーセリンパークのツヴィンガー宮殿は素敵な廃墟に変わっていく予感
- 宗政酒造はB級観光スポット運営をしていることから侮ってしまいそうだが美味しい
- まずはギャラリー有田で好みの有田焼のスタイルを探すのも有り
- 佐賀県立九州陶磁文化館は逃せない美術館。行くならここだけでも良いぐらい。
- 深川製磁チャイナオンザパークのパリ万博で金賞受賞した大壺は必見。最高級ラインの食器類が見られる。
- 深川製磁本店も建物好きには周りたい名店
- 手塚商店はギャラリーの役割が何かを再認識させてくれる
朝一番の行き先は泉山磁石場に定めた。
ここで磁石が発見されてから磁器としての有田焼が始まったとされる始まりの地。
掘削されて山一つが消えた。山一つを400年かけて有田焼に姿を変えて日本国内や欧米に出荷したという。
当時最高級の磁石採掘場であり、誰でも採掘することはできなかったようだ。最良なものは鍋島焼の材料として大川内山の秘窯に送られたという。
そこら辺にゴロゴロと転がっている。なるほど、確かに白い。そして簡単に砕ける。表面の黄ばんだ部分を削り取り、中の白い部分を粉に砕いて生地粘土に仕上げる。
目に見えるこの山も木に覆われた起伏も全て磁石の塊だという。もう1000年は持ちそうな埋蔵量だ。
すぐそばにある磁石神社へ。
ここには秀吉による文禄・慶長の朝鮮出兵の際に鍋島藩に連れ帰られた李参平の像が祀られている。
望まずに拉致、連行される形で日本に連れ帰られた陶工李参平だが有田の総鎮守である陶山神社で応神天皇、藩祖鍋島直茂と並んで陶祖として神格化して祀られている。
言うならば伊万里焼の神様。しかしそれも李参平が泉山磁石場で磁石を発見して景徳鎮を目指す磁器造りの道を切り拓けたからであって彼の存命中には後世ほどに手厚く扱われたのかどうか。李参平の物語があるならば探して読んでみたい。
陶工だから神になれた。技術知識を持たない朝鮮人は酷い扱いを受けた人も多いのだろう。陶器はともかく日本の磁器の歴史の始まりは非人道的でもある。ブラジルの珈琲豆産業が半ば騙されるようにして移民し帰ることも叶わず身を粉にして働いた日系移民による貢献が大きいことに似ているが同調圧力でもなく拉致されて渡日した李参平はやはり境遇は大きく違う。
神威赫赫垂祥萬歳。
地図の鳥瞰図を見て近道だと錯誤して山越えしてポーセリンパークに行く6kmの山越え道を選んでしまった。坂が急すぎてペダルが回らない。自転車から降りて押し歩くこと十数回。
過酷な峠道を抜けた後の長い長い坂道は八重桜が満開でその下を汗だくになりながら登った。
ポーセリンパークは最近のガイドブックには載らないことも増えているようだ。
遠くからぼんやりと眺める限りは素晴らしい。
ドイツ、ドレスデンにあるツヴィンガー宮殿の設計図を元にかなり忠実に再現されているらしい。
晴天に恵まれるとこの上なく写真映えする。
石像は石でできておらず、造形がよろしくないのであくまでソーシャルディスタンスを保ちながら鑑賞するのが正しい。
残念ながら宮殿内の展示は全てなくなっていた。
雨蛙が1匹、宮殿を眺める。
遠目に立派な宮殿も修繕が間に合わず割れている箇所もある。石の欄干の柱は樹脂製で表面を石に見せかけているだけ。中には砂が詰まっていた。心無い誰かぎ蹴飛ばしたのか、不注意で重い機材をぶつけたのか。
素晴らしく雰囲気のある廃墟への道を着々と歩むツヴィンガー宮殿。廃墟好きとして一度は見ておきたかった。
菜の花畑越しの宮殿。
宮殿があるかと思えば登窯のあるほんのりB級スポット臭。磁器の共通点があるのは理解できるがコンセプトの纏まりのなさを感じる。
説明ボタン装置まで有田焼き。
NHKの連続ドラマは陶芸がテーマだったのか。今から見てみたい気もする。
版権無視な感じがほっこり。
轆轤体験をされている観光客が何人かいた。
施設の半分近くが閉鎖されている。大きな食堂には歓迎光臨の文字、〇〇日元の値札が見える。中国からの団体旅行客でかつては賑わっていたらしい。
宗政酒造
ポーセリンパークの運営母体は宗政酒造だそうだ。宗政酒造がポーセリンパークを作ったわけではなく買収したらしい。そんなわけでポーセリンパークの中に日本酒販売コーナーが併設されてますますコンセプトが不明なものになっている。
とはいえ日本酒の評価は高いようだ。甘口なのに酸味も感じられてくどくない九州らしい日本酒。珍しく試飲させてくれたのだが酒好きで熱く商品の魅力を語ってくれるお姉さんに惚れそうになった。
ルパンの娘という深田恭子主演の映画のロケ地となったらしい。
ここから8km先の深川製磁 チャイナ・オン・ザ・パークへ。もうヤケクソになって自転車を漕ぎまくる日に決めた。平目筋がプチプチ切れてくれることだろう。
これが1900年のパリ万博で金賞に輝いた世界に伊万里焼を知らしめた大壺。
こちらは商品カタログ代わりに作られたプレートだそうだ。
実際の質感や色合いを確認して注文できる優れもの。この皿がほしい。
ギャラリー有田
ようやく遅いブランチをとる。
有田焼き販売ギャラリーに併設されたカフェなのだが2500近いカップとソーサーのセットから自分好みのセットを探してそれで飲めるお店。
料理の質がとても高く、数量限定の豪華有田焼きにグルメの詰まった有田焼御膳は人気だという。マツコデラックス激賞のスープカレーがあるかと思えば佐賀牛ハンバーグもあったりと有田焼カップアンドソーサー頼みの店では無い。
あらゆるジャンル、嗜好のカップとソーサーが並んでいて見ていて楽しい。
ギンギラ豪華カップ。
ジオメトリックな七宝模様。
鹿柄があったのでこれを選んだ。
佐賀県立九州陶磁文化館は素晴らしすぎたのでまた別に書きたい。ここにも2時間近くいただろうか。
深川製磁本店
手塚商店
数ある有田焼を販売するギャラリーのうちの1つだけれどもとびきり上等な店。
夕食は連夜「ひとふし」で頂く。ちゃんぽんだけでなく皿うどんも食べないと。