日暮里にお出かけ。令和4年にもなってこの昭和感たるや。
日本を代表する彫刻家朝倉文夫のアトリエ兼住居として29年間暮らした場だという。
館内は写真撮影禁止とあったので載せられるものがないが、素晴らしいブロンズ像の数々。
制作を容易にするために天井高8.5メートルの制作アトリエに昇降台を特注して制作者が足場を組んで高さ移動をすることなく、作品を上げ下げして制作できる工夫をしている。
https://www.danshin-smile.com/asakura-fumio-2/
単に優れた彫像芸術家ではなく、造園や建築にも明るく、コンクリート造りの機能的アトリエと風情ある巨大な中庭を望む日本家屋からなる複合構造の大邸宅になっている。
4階建にあたるコンクリート棟の屋上は庭園となっておりブロンズ像が点在。
しかし屋上庭園の広さよ。
オリーブの木だろうか。
そして端には「砲丸」と題された像がガーゴイルのように高層建築のない谷中周辺を見下ろす。
日本家屋部分は大きな中庭を取り囲むような構造をしており、中庭はその殆どが造作された池の水面。水のせせらぎの音をこよなく愛し、寝室からも水音が聞こえる。自分の好みを一流芸術家の感性で突き詰めていて夢の御殿となっている。注文を受けた庭師や建築家、棟梁は面食らい、興奮しただろうな。こんな風変わりな注文、腕の見せ所ではないか、と。
猫を愛する人だったらしく15匹以上の猫を飼い、沢山の猫像を残している。
一部は撮影可能だったので撮った。
住まいとしても大豪邸。個人宅としてはこだわり抜いた贅を尽くした巨大施設でその資金はどこからきたのか疑問に思った。親が資産家というわけではなく、彼自身が彫像芸術家としての腕一本で稼いだ金で作ったそうだ。そしてその秘訣は名を成し功を成した政治家や実業家の彫像制作依頼を数多く受けたことによるらしい。
3.78mの巨大な小村寿太郎像、大隈重信像などなど。そういった作品はかなり魅力的な金額の制作依頼費と謝礼になるらしく、芸術を金に替えたとの批判も多かったそうな。今なら安倍元首相の巨大ブロンズ像を制作費プラス謝礼1億円で受注するようなものかもしれない。後援会やら政党派閥所属議員からの寄付やらで簡単に集まりそうな金額にも思えてくるし、「れいわ」や「立憲」の政治家が青筋浮かべて批判する姿も想像できる。なるほどな。
私としては自分の作品で稼ぎ、自分の金でこだわり抜いた家屋庭園の造作や美術品の蒐集をするなんて理想的だと思うのだが。芸術家は清貧たれ、などとは思わない。