谷中を散歩して、こじんまりとしたギャラリーに立ち寄った。
そこの女性オーナーと展示作品の話で盛り上がった後に、私も趣味で陶芸作品を作るのですよ、とさらに話が盛り上がった。
「あなたの作品、面白いわよ。私は普段はこんな勧誘の仕方はしないのだけど、あなたうちで今度個展しない?ギャラリー代は無料でいいから売上金額折半でどう?」
そんなお誘いを受けた。
後で調べると1週間7万円のギャラリー使用料を通常は取っているらしい。
谷中は東京藝術大学に近く、小さなギャラリーや趣味の店も散在し、週末には「谷根千」という東京下町風情を味わいに多くの人が遊びに来るエリアだ。
個展をすれば多くの人に私の作品を見てもらえるのだろうな。それは怖いが嬉しい。
ギャラリーオーナーはギャラリー使用料を無料にする代わり売上代金を折半にする、つまりマージンを50%取りたいと提案して下さっている。つまり売れると思って下さっている。しかしそうなると売るつもりのない作品を展示するような出し惜しみはできず、私の作品をたくさん売る為の個展開催になるのだろうな。
普通は作家が作品を売るために個展や出店をするのだから当たり前の話をオーナーはされているのだろう。しかし私は趣味で自分が欲しい植木鉢やらを作っているのであって自作品を換金したい訳ではないのだよな。
谷中のような場所でたくさんの人に作品を見てもらって感想を聞いてみたい。しかし自分の作品の沢山を手元から失って仮に20万円懐に入ったとして嬉しいかと思うと、どちらかというと後悔する気がした。
自分はギャラリーオーナーと話をするようなビジネスの話をできる作家ではなく単なる趣味人でしかないことに気付いた。