「悶々としてるなら山でも登っといで。高尾山とか。」そう送り出してもらった。
私のことを理解してくれている人はそうはいなくて親とパートナーの有り難みをしみじみと感じる。まあ、一般論として他の人を深く理解する動機などないから自然な話だ。私だって親しいと思っている友人のことすら結局のところよく知らない。私のことを深く知ってくれている人がいるということは貴重なことだ。
流石に高尾山で人混みに揉まれては考え事には適さないので、神馬山に登ってみることにした。
・藤野駅から歩いて山頂まで2時間。
・山頂では眺望を前に茶屋で昼食。
・下りも山頂から陣屋温泉まで1時間。
・爽快な檜風呂 陣屋温泉
・陣屋温泉から藤野駅まで45分。
辛抱のない子供たちを連れて行くにはちょうど良い負荷と所要時間かもしれない。もう少し涼しくなった秋口にここ神馬山を登るか、東京都最高峰と煽って雲取山を登るか。
夏の山の緑。
藤野駅からのバスは10時までで午前の便は終わっているので駅から徒歩で20分ほど。ここが登山道への入り口。
登山道は4kmの道程のようだ。
35分ほど登って残り2km地点にある休憩所に到着。雨宿りシートなんてものを備えてくれている親切。
さらに25分ほど登って和田分岐に到着。残りは700mとのこと。
ハイキングといえる程度の山道で間違っても手をついてよじ登るような傾斜地はない。歩き続けて登れてしまう。
登山道に入ってから1時間20分強で山頂についてしまった。YAMAPのコース標準だと2時間25分ということになっているがあっさりしたものだ。台風一過で青空が広がってくれているかと思ったが、案外雲は多く透明度も低かった。それでも開けた眺望に気分は上がる。
ここらは柚子の産地だそうで、柚子サイダーを頂く。
うどん700円を注文。この炎天下、冷たいうどんにもできるのはありがたい。梅干、刻み茗荷、胡瓜やトマトが入っていて清涼感のあるうどんだった。
さて、神馬山のシンボル。
馬頭のデフォルメはどうなんだろう。なんだか。異議あり。もう少しどうにかならんかったのか。
山頂の展望席でくつろぐ登山客。ごろんと横になって空を見上げたら。。暑い。山頂は857mでしかないので麓と比べても涼しくも何ともない。40分ほど山頂でうどんを食べたりのんびりして12:51に山頂出発。
そういえば、今回登る際には登山道で数百匹と言っても誇張ではない数の脚の長い蜘蛛のような虫を見た。胴体がフワフワと宙に浮いているように見えるほど脚が細長い。アカサビザトウムシではなかろうか。赤錆座頭虫と漢字で書くと時代劇に出てくる山賊のような印象だが人畜無害。登山道に出てきており、逃げるスピードも遅いので踏まないように歩くだけでなかなか気を使った。
可愛いやつよ。
山中はまだ原種紫陽花が咲く。
栃谷尾根といっても眺望のない尾根。
頭の中をグルグル、グルグルとここ2ヶ月のことが巡る。納得し難いこと、不可解なこと、反省すべきこと、油断すべきでなかったこと。
グルグル、グルグルと仕事のことを反芻させながら歩くので景色もさほど楽しめず。しかし若干の疲労と引き換えに段々とどうでも良くなってくるというか、開き直ってくるというか。これこそ登山の効用か。
この登山のご褒美と言うべき温泉風呂のある陣屋温泉に到着。
檜の大きな浴槽で、窓を開けるとひんやりとした風が吹き込む。熱すぎずこの夏場でも長湯できるのがありがたい。蝉が喧しい。
見下ろすと遥か下方に渓流があり、その少し上がったところに人工瓢箪池が造られ錦鯉がのんびりと泳ぐ。宿の主人の趣味の池か。まさか鯉料理の生簀ではあるまい。
6人は入れる大きな湯船を独り占めする贅沢。日帰り入浴は1000円。登山後の温泉としてはなかなかのものではないか。秋の登山帰りに立ち寄るのも気持ちが良いだろうな。
もう早くも彼岸花が咲いていた。山紫陽花もまだ咲いているというのに。
終戦記念日。理不尽に大勢が殺されたあの惨劇とそれらを乗り越えてきた人達の苦労を思えば私の悩みなど虫刺されほどのものでしかない。山の緑と湯船の心地よさに身を委ねて思った。何を好き好んで苦痛なことをしてるのか。私が貢献したい対象に貢献できていないクセに、と思う。
捲土重来。やり直そう。相当カッコ悪いが一時撤退、立て直し。笑うなら笑え。しゃあない。判断を誤ったのは私だもの。
10:13 藤野駅着
10:50 神馬山4km標識
11:24 神馬山2km標識
11:59 神馬山0.7 和田分岐
12:12 神馬山山頂
12:51 山頂出発 栃谷尾根方面へ
13:22 藤野駅5.2km、栃谷1.2km標識
13:55 陣屋温泉
14:50 陣屋温泉発
15:35 藤野駅着