国立科学博物館「毒展」

子供にねだられて国立科学博物館で11月から開催されている「毒展」へ。動物、植物、鉱物や合成物の毒がテーマだそうだ。

 

前日決めた話なので日曜日の予約チケットは売切れて既に無く、開場30分前に到着して当日券狙い。8時半に到着。朝イチなので当日券は購入できたが既に20人近く並んでいた。そんなに人気があるのか、毒展。

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精巧で巨大なハブとオオスズメバチの模型が出迎えてくれる。記念写真に良い写真スポットだ。
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この状態で牙と頭が飛んできて、肉に刺さると牙の先から毒液が一気に内部に注入される。こうして見ると蛇は目で標的を視認できていないのだろうが、舌で把握できるから問題ないのか。噛み付く際には舌を引っ込めるのだろうか、それとも目標に弾着するまで舌を出して方向確認をするのだろうか。
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巨大なイラガの模型。トゲトゲ過ぎて、子供達がまたがって遊んだりできるように払い下げることはできない。展覧会後はどこに行くのだろうか。先着で実物大イラガのシールも配布されていたらしい。イラガがハブ、オオスズメバチに並ぶ人気毒役とは知らなかった。
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ドクゼリ。毒芹。爽やかな印象。
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枇杷の果肉が未熟なうちは毒だと知らなかった。柿しかり、梅しかり、熟すまでは毒を持って食べるなと警告する。熟したら食べて種を運んでくれと毒を消し果実を甘くして誘引する。何も考えずに何でも食べようとする捕食者を諭すかのようだ。
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枇杷の種が毒だなんて知らなかった。

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寝床で見たくないものその一。
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ブタゴリラは人間の名前、みたいなものか。蜘蛛と鳥を混ぜて恐怖具合が増すネーミング。
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自分で噛ませてレベル評価した向こう見ずな学者様がいたらしい。

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ソクラテスの死刑は毒殺。クレオパトラは毒蛇による自殺。

チェーザレボルジアは毒殺で政敵を容赦なく排除したが愛用したのはカンタレラという白い無味無臭の毒で毒展では亜砒酸説を採っているようだ。「砒素化合物はその摂取経路や摂取量によって症状が慢性や急性に変化するため亜砒酸をカンタレラの主成分であるとすれば「処方により即効毒にも遅効毒にも自由に操れた」とされる当時の記述にも矛盾が無く説明がつく」そうだ。

塩野七生著「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」は読み返したくなる名著。
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ヤマカガシの毒は全て食するヒキガエル由来だそうだ。それ以外の餌で育てれば無毒ヤマカガシが養殖できるのだろうが需要はなさそうだ。
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惚れ惚れする骨格標本。組み立ての労力を想像すると気が遠くなる。
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ヤドクガエルオールスターズ。トリカブト毒矢文化圏、ヤドクガエル毒吹矢文化圏などの分布図は学術的で興味深かった。
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メグミは赤と青と覚えた。
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オーストラリアの人気者といえばコアラ、カンガルー、ウォンバット、カモノハシ。コアラは数少ないユーカリの毒素を解毒できる生き物。カモノハシは自身に毒を持つ。
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美しいハコフグ。鮮やかな背景。昔の美術館や博物館は背景色がつまらなかったが最近はカラフルになったと思う。
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誰もが名前を知るワライタケ。少しばかり舐めてみたいと思う。
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アカテングダケトリカブト、トラフグ、キングコブラヒョウモンダコセアカゴケグモスズメバチが茸、植物、魚、爬虫類、頭足類、蜘蛛、昆虫各界の誰もが名前を知る代表のように思う。単なる毒性の強さだけでなく外見的特徴も踏まえた認知度において。今でもキノコ代表はカエンダケではなくアカテングダケだと勝手ながら思っている。
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辰砂は水銀を含むそうだ。陶芸ではたまに使うのでどきりとしたが釉薬の辰砂は銅であり赤い発色が似ているというだけの別物らしい。
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毒を持つ生物と毒を持たないベイツ型擬態の生物を見分けるのは本当に難しい。ヒレを見ればわかると言われても実際には動いているわけだ。

生き方としては毒の生成はエネルギーも使うのでベイツ型擬態が効率的で見習いたい生き方だ。存在がブラフ。「虎の威を狩る狐」という表現は狐に不当だからベイツ野郎とでも呼ぶことを提唱したい。
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ラーテルの剥製は初めて見たかもしれない。コブラの毒が効かず、分厚い皮を持ち、ライオンも象も恐れずに喧嘩を売る攻撃性を持つ好奇心の塊のような行動的な動物、ラーテル。一匹狼の言葉が本来意図するものは一匹ラーテルの方が当て嵌まると思っている。
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国立科学博物館の展示は一般的な客が求める、かつ吸収できる水準を超えた正しい知識を浴びせてくれるのが素晴らしい。コブラの毒がアルファ神経毒であり、呼応するのはニコチン性アセチルコリンエステラーゼ受容体であることも学べた。
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さてさて、売店コーナー。ヤドクガエルは体型、色ともに素晴らしいが思っていた以上に小さい。大型のヤドクガエルがいれば見てみたい。
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アカハライモリがそんなに毒だという印象はなかったが、毒だからこその警告色。
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色違いのヤドクガエル型の定期入れ、小さなポシェットになっているものも見つけた。
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毒生物クッキーも印刷のクオリティは高いと思われる。おそらく前回の植物展と同じ発注先。
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サカナくんが被っていそうなハコフグ。なかなかオシャレな模様をして、目がつぶらで可愛らしい。
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とても欲しいと思ったヌイグルミ。今回の展示で特に印象に残ったのはハブの噛みつく際の開口の大きさ。今まで蛇のヌイグルミはどれも口を閉じた形状のものしか見たことがなく興味を持たなかったが、これは躍動感があって良い。しかし息子達に「必要?」「2400円もするよ」と嗜められ我慢した。子供達に止められるとは。肌触りも良いし冬、首に巻いたら暖かそうなのだが。
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地球館にある精養軒が運営するカフェへ。値段は少しお高いのだが昼しか営業していないので仕方ない部分はある。毒展スペシャルメニューを頂いた。
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量が少ないとか色が奇抜とか思ったが、何だこれ。相当に美味しい。真フグのクルート焼きに紫キャベツのソースだそうだ。それにパンとスープがつく。1800円なり。

知恵熱が出そうなぐらいに学べることがたくさんの「毒展」だった。