新宿御苑の温室は被写体に溢れていた。
この大きな葉、一枚が花よりも華やかで雄弁で圧倒される。
卓上に見上げるように葉が覆った一画を夢想する。眩しくないように葉陰を作ってくれる。そして見上げるとステンドグラスのようだ。
大きさというのも一つの力であり、わかりやすくて良い。
毒々しいほどの鮮やかさ。
白く花弁の薄さが儚げ。
ラテックスのような艶やかさ。
タマツヅリの野生的な姿。
シダの葉の連続性。
ビカクシダの曲線。
ランの弥次郎兵衛的重心と左右のバランス。
こういうのを見ていると何か作りたくなる。
散歩して歩くのが楽しい。
バナナもその大きな葉に包まれると小さく繊細な秘部のよう。
ウツボカズラも葉が枯れ始めているとまた趣が変わる。影茶色の底の赤さが妖艶。
寒空の中、アロエが赤い花々を咲かせていた。
よく手入れされていて見栄えのする美しい植物の数々。子供の頃には全く興味の湧かなかった植物園もこの年になるとあれこれ楽しめるものだな。
ジュウガツザクラがもう咲いていたと言うべきか、まだ咲いていたと言うべきか。
新宿から歩いて抜けた新宿御苑はここだけ音がない結界のよう。