桜は単なる視覚的な美しさだけでなく、春の終わりの季節の移ろいを象徴的に実感するものとして愛でていることを知った。
熱海には糸川沿いに日本で最も早く咲く桜の並木がある。熱海桜。
不思議なもので、1月だとまだ花見を楽しむ心境にならず気持ちの盛り上がりに欠ける。
桜は薄桃色でしっかりと美しいのに、長かった冬が終わるあの期待感を伴わないと晴れやかな気持ちがついてこないことに気づいた。
桜は、花見は、花だけを愛でていたのではなく季節の移ろいを、しかも冬の完全な終わりと春夏秋という活動的な季節の始まりを視覚的に実感する象徴だったのだと気づいた。おそらく夏に桜が咲いても同様に気持ちは昂らないのだろう。
海龍に獅子の頭がついたような石像。
何故かタコ。バブルの頃にお金をかける余裕があったのだろう。
なんとも風情ある羊羹屋をみつけた。ここの一口羊羹は熱海の定宿のお茶請けで出されるものだった。
羊羹は宿にあるし、口は饅頭を欲していたのでその一区画先の和菓子屋へ。
子供が梅昆布茶がえらくお気に召していた。1月の花見でも、花より団子は変わらず。
熱海は東京に比べても一段と暖かいのだろう。散歩してて元気な露地植えの多肉植物に出会う。ミセバヤの一種が鈴なりに花を咲かす。
石垣にクラッスラの古木が無数に生えている圧巻の一景。20年、30年は経っていそうな幹の太い「金のなる木」だった。私も10年後、20年後を見越して自宅の花壇に何か多肉植物を植えたいが雪を被ると死ぬし、立派になると勝手に引き抜いていくような輩が都心には残念ながら多い。何か適した植物はないものか。
そんなわけで再び熱海保養所へ。もう熱海に来る際には毎回、ここに泊まることになるのだろう。
今回は建物の左端の部屋なので少しばかり左側の壁が視野を狭くしているが相変わらず眼下にミニチュアのように新幹線や在来線が見えて楽しい光景。
今回は昼御飯をおにぎり1つだけにとどめたのでお腹が鳴るほどに空腹だ。
もうそれぞれの料理の説明は覚えていないのだがどれも本当に味が良い。皿や盛り付けを豪華にしたらもっと上等そうに見えるだろうが、美味しいことを知っているので良いのだろう。
刺身も相変わらず美味しい。
煮物、揚物が食事中に追加で出される昔ながらのスタイルで食べ終わった皿を下げてもらいながら食べないと目の前が埋まってしまうほど。
人生で初めて食べたアンコウの唐揚げが絶品だった。からしソースのようなもの、レモン汁と味変しながら楽しむ。
揚物こそは揚げたてが嬉しい。
梅祭りの時期なので汁椀も梅風味。
美味しいものを食べて温泉に浸かって寝る。その為のまさしく「保養所」であって立派な露天風呂や設備のある観光旅館ではない。
新宿からロマンスカーに乗ると終点小田原駅まで子供の乗車賃が50円で済んでしまう。赤字路線のない小田急線のなせるサービスだ。特急料金を大人1名、子供2名分だけ合計2000円払えば良い。とても美味しい食事が朝夕付いて大人1名子供2名で7000円と3500円。しかも子供半額でも料理は大人と同量出る。親子3人で総額2万円で1泊2食と交通費を賄えてしまうからなんとも懐に優しく気軽に来られる。かなり前から予約し計画も予算も意気込むような「旅行」ではなく、週末に保養所に予約の空きをみつけたら即座に思い立って行ける「週末保養」なのだ。
朝日が昇る。6時50分頃。
誘惑に負けながらも宿題をする息子の図。頑張れ。1月の子供のおねだりによる熱海保養。