映画備忘録 井上雄彦監督に紀里谷和明監督を思う。

ここ最近観た映画の備忘録。

 

THE FIRST SLAM DUNK ☆☆☆☆☆ 百選

泣けて胸が熱くなり、興奮する。原作、脚本、監督全て井上雄彦とはこれぞ価値創造と思い知らされる。GHOST IN THE SHELLを初めて観た時の衝撃のようなアニメーションの基準値を別次元に上げる躍動感と映像表現の斬新さ。アニメーションだからこその絵の簡素化表現とのメリハリなどアニメーションの可能性も多いに模索して提示している。そして映像表現だけでなく人物の心理描写、物語展開も秀逸な傑作だと思う。バガボンドを描いた後だからこその成熟のようにも思う。多分、熱烈な原作ファンではないからよかったようにも思える。ANOTHER SLAM DUNKの方が適した題名かもしれない。安西先生のガッツポーズ絵が欲しい。

「指導者失格です。あと少しで一生後悔するところでした」と自覚した上で一生後悔するかもしれない過ちを重ねたのは何故なのだろう。監督としてのエゴや欲が勝ってしまったのか。

 

https://type-r.hatenablog.com/entry/20151122

かつて紀里谷和明監督が至る所で吠えていた。

「予算の少なさを言い訳にして日本じゃ無理だとすぐに言いやがる」「なんで世界に通用する映画を作らないの」「CASSHERNが日本映画を変える。紀里谷和明が変える」「僕がやっているのは新しい可能性の提示なんですよ」みたいなことを、THE FIRST SLAM DUNK井上雄彦監督は黙々淡々と有言実行した印象。しかも番宣やら事前告知に精を出すことなく「クリエイターの評価は生み出した作品で測られる」「作品が本当に良ければ売れる」という紀里谷さんの言葉を借りれば「業界のセオリーや方程式なんてクソ喰らえ」という映画のプロモーターのノウハウを全否定するかのように「単に純度の高い良作を世に送り出す」「事前告知は皆無」なやり方で蹴散らした。街頭で名刺を4万枚配ったり、TVにたくさん出て「日本の映画評論家は俺を理解できない」とか作品の中身だけで勝負しないという自己矛盾した発信を続けていた紀里谷さんを私は好意的に応援していたのだが、クリエイターの純度というか格の違いのようなものを井上雄彦監督に見たように思う。

 

 

コーダあいのうた ☆☆☆☆

見始めてなんだかえらく見覚えのあるストーリー展開だと気付き、すぐにフランス映画「エール」のリメイクだと確信した。原作はフランスの酪農一家だが本作はアメリカの漁師一家。原作では弟だったのが兄として描かれていたり細部に違いはあるが、魅力的な要素は原作を全て踏襲していて次の展開がわかっているのに泣けた。繰り返し観たい良作なのだと思う。私としては原作「エール」を繰り返し観たい。粗野で慈愛に満ちてポジティブなあの親父が同一人物かと思うぐらい原作と同様に描かれていて嬉しい。2022年アカデミー作品賞受賞作と知り、改めて原作「エール」の溢れる魅力に感嘆とする。「ドライブマイカー」のような陰鬱な作品ではなくこんな生命礼賛な力強い映画が日本から世界に出て欲しい。それで思い出すのは「おくりびと」か。

 

 

キャラクター ☆☆☆

菅田将暉主演、小栗旬中村獅童などの豪華演技派俳優陣に加えてセカイノオワリのfukaseサイコパス殺人鬼を演じる。浦沢直樹の「MONSTER」の共同制作者が手がけた脚本とあって展開の読めないストーリーや独創性溢れる設定など秀逸。

 

とんび ☆☆☆ 百選

阿部寛薬師丸ひろ子の演技が支えすぎでしょう、この映画。客観的に考え直すとあれこれ言いたくなるが、単に阿部寛が好きだから全て許してしまう。そして麿赤兒の全体では出演シーンが少ないくせにどっしり食い込む存在感よ。ストーリーの展開などわかりきっていても色褪せないベタにまた観たくなる作品。

 

プロミシングヤングウーマン ☆☆

とある女性の仇討ち的復讐劇。報われなさすぎで切ない。男性優位社会を批判するがそれを支えるのも一部の女性だったりもする、その批判も含めて救いがない。腑に落ちなくて映画サイトのコメントを読み漁ったらカフェや衣装がカワイイみたいなコメントが多くてそこかよ、と思った。例の「動画」を観て面白いと思ったと言い、二度と連絡してこないでと言い放った女が暗示的にも思えた。

 

愛がなんだ ☆☆

身勝手で夢見がちで享楽的な恋愛関係が交錯していく様が描かれる。共感するには歳を取り過ぎてしまった。

 

インヘリタンス ☆

大富豪が墓場まで持っていくべきとある秘密を娘に相続して死ぬ。父の忌むべき秘密を次々と知ってしまう。

インヘリタンス(字幕版)

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