友達は少ない方だと思っていたが、その少ないながらの友達づきあいが案外、長く続いていたりする。
小学生時代の友人が1ヶ月前に突如電話をかけてきてどうしたんだろうと思ったら、少し強引にご飯に行こうと言う。何か切羽詰まった雰囲気があり、夏休みの終わりに実家に帰るのでその時に2人で食事に行く約束をした。Kと会うのは5年ぶりぐらいだろうか。そんな距離感。
Kは小学校では学年一体格が大きく「ジャイアン」のような位置付けの奴だった。乱暴者とでも言うのか。校舎中を追いかけ回されたこともある。私の方が小柄で足も速かったが捕まったら一貫の終わりだと階段を上からひとっ飛びで降り、着地の衝撃と痛みに顔を顰めながら休み時間中逃げ回ったのを覚えている。あれは何がきっかけだったのだろう。そんなKはK興業という給湯器の交換や屑鉄などの廃棄物回収の仕事をしている。親分肌な裏表のない性格のおっさんに仕上がった。
あの人、この人の近況を聞く。
ガラス屋の息子N元。親父さんには妻を亡くした後に後妻がいたのだそうだが、親父さんがボケ始めた後に土地建物などをごっそり騙し取られてしまったらしい。
私も一緒に子供キャンプに行った背が高く人懐こくひょうきんなYはヤクザになってその後、消息はわからないらしい。
パントマイマーになったJ堂は今も大道芸人会社を経営しながら自分もパフォーマーとして舞台に立っているとのこと。離婚して残された子供と二人暮らししているそうな。
S田とS木は今でも仲良くサバイバルゲームに興じているらしい。S木はついに年貢を納めて同棲していたパートナーと籍を入れたとか。
口数が少なく目立たないキャラだったYは同窓会グループラインでみんなが戸惑うほど明るく絡むキャラに変貌していた。長野の工場ラインに入って働いているらしい。少し人を馬鹿にする絡み方をするので近づかないとKは言っていた。
ここまで時が経つと、あの頃誰が好きだったのかなんて質問にもさらりと答えてくれる。お互い結婚して子供もいる私たちにとってもはや恥ずかしさなどない話題だ。
そうか、KはM木さんのことが好きだったのか。クラス一番の優等生のような子で書道がずば抜けていた。それでいて明るく嫌味がなくお茶目なところがあった。言葉遣いも上品だった。とてもしっかりとしたご両親の家庭で躾けられて育ったような子だった。
大学生か社会人になって2人で会ったことがある。M木さんが指定してきた店は六本木の「つるとんたん」だった。黒いレザージャケットに短いレザーパンツ、がっつりとしたアイメイクで「ギャル」に変身していて面食らった。
親の縛りから逃れて好きなことをしたいと思ったんだよね。高校ぐらいから親と喧嘩することも増えてさ。今は一人暮らし。そんなことを言っていた。独特なお茶目さは変わっていなくて安心した。
そういやなんでいきなり電話してきたのかとKに聞いた。
電話した日の前の夜、お前が夢枕に立ったからこれはまずいと思って電話したんだよ。俺のそういうのは残念ながら当たることが多くてさ。
あれ、自分死んでるんだっけ。
何言ってんだよ。でも無事で何より。たぶん1ヶ月前ぐらいとか精神的にしんどかったころがあったんじゃないの。もう少し気を抜くとか考えた方がいいぞ。
そんなスピリチュアルな助言を旧友からもらった夜だった。