桜守 佐野藤右衛門邸の桜畑


桜守と呼ばれる人が京都にいる。円山公園の大枝垂桜を始め京都の寺社仏閣の桜の銘樹で桜守に看られていない桜はないとすら言われる桜の専門家で当代で十六代目になる。



昔、テレビのドキュメンタリで細川元首相の鎌倉にある寓居の桜を診に佐野氏が訪れてあれやこれやと指導しているのを観た。元首相は非常に低姿勢で、しかしとても熱心に教えを請うており、好感を持ったのを覚えている。その桜守の佐野藤右衛門邸が桜の開花期間中に桜畑を無料一般開放してくれている。山奥などではなく御室や宇多野に近い場所にありながら、堂々とした茅葺きの母屋を今に伝えていることに驚かされる。



インターホンなどという無粋なものは備えておらず、用のある客は鐘を槌で三度敲けとのこと。佐野家永住と銘のある鐘が鋳造されたのは思いのほか最近の平成三年だった。単に昔からあるだけでなく、今も敢えてこのようなものを注文する感性にシビれる。




脇の桜畑には多種多様な桜の品種が植わっており、興味深い。鬱金有明、太白、白雪、永源寺、二重豆、南殿、御車返し、御衣黄、妹背などなどこんなにも種類があったのかと驚くほど。5cmはあろうかという大輪の太白桜は興味深かった。一番の好みは一重で紅の強い永源寺桜だろうか。





夜には篝火が焚かれ桜が夜空に浮かび上がる。考えてみれば、商品陳列場でもあるのだからな。来年には是非、夜に訪ねたい。