書籍

最近の読書備忘録

「後悔病棟」垣谷美雨著 ☆☆☆ 癌末期患者病棟に配属された人の気持ちが読めず問題ばかりを起こしている若い女医が心の声を聴ける聴診器を手に入れるところから話が始まるオムニバス4編。 仕事ばかりに励み、子供たちは見舞いに来るのも面倒くさそうなほどに…

本のサナギ賞やあれこれ読書備忘録

☆☆☆「稲荷山誠造 明日は晴れか」本のサナギ賞 受賞作 香住泰 祖父と娘、孫との価値観の相違や断絶。 年寄りのパワー。 お互いの歩み寄り。 いつまでも人は変われる。 そんなテーマが映画化されそうなドタバタ劇を通じて描かれる気楽に楽しめる娯楽小説。 「…

アーティストデビューと呼んで良いのか

365 ART PLUS MAGAZINEとやらから掲載のお誘いを頂いて45号に載せていただいた。 見たことも聞いたこともない雑誌なのだが予め印刷した雑誌を書店で販売するのではなく、全て電子的に原稿も作り完全受注印刷で予約部数だけ発行と配送をしているらしい。 ・新…

上半期書評備忘録

爆弾 ⭐︎⭐︎⭐︎ 呉勝浩 「私を見ない人は私にも見えない」 読み返したくなる、無差別爆弾テロ容疑者に一片の真実や誰もが持つ人間の負の面を語らせ、えぐらせる強烈な作品。 刑事に対しての分析が辛辣だ。斜に構えて分析し達観してわかったような気になっている…

蟹ブックスでエロい本を買う

2022年9月に開業したアパートの2階の1室を改装した小さな本屋。 情報過多すぎて大勢が愛する高評価な本はamazonなどの評価で判断できるけれども、ニッチなジャンルの面白い本は探すことが難しい。 だから自分の嗜好性と一致するセレクトショップ型本屋は自分…

読書備忘録 第一四半期

線は、僕を描く ☆☆☆ 砥上裕将 水墨画の世界と魅力を映像なしに脳内に想起させてくれる良作。心のあり方が線に現れるのはわかる気がする。無心に夢中になって導かれるように造形した感覚になる時はあるし、そのように作られた作品は再現の難しい良作になる実…

最近の読書 備忘録

「ザリガニの鳴くところ」☆☆☆ ディーリア・オーエンズ著 湿地の少女の人生。全く観たことのない世界が脳内に鮮やかに浮かぶ。親に兄弟に捨てられて湿地で孤独と戦いながら暮らす少女の話。ホワイトトラッシュ、黒人差別、アルファ雄の傲慢、美醜、保身。 暗…

犬好きが泣くこと必至の小説「雨降る森の犬」

犬を飼っている人間は泣いてしまうこと必至の小説。 「人間は過去と未来に囚われて生きている。なんでも過去の経験に照らし合わせて、未来を予想しようとするんだ。 過去はこうこうこうだったから、未来もこうこうこうなるはずだ。そう決めつけて、時にはや…

夜と霧

第二次世界大戦で絶滅収容所に送られるも生き延びたユダヤ人心理学者ヴィクトル・E・フランクルの体験記。 特徴としてはその他多くの収容所体験の回顧録と違い、収容所送りにされた時、収容所生活、終戦に伴う開放時の自分自身や周囲の人の心理分析や考察を…

吉祥寺から高円寺まで徘徊する。「カフェ ロシアン」「天文図館」「ビルボード」

突如、思い立って有給休暇を取ることにした。いざ休みを取ろうと思ったのにやりたいことがすぐに思い浮かばないことにショックだった。東京国立博物館も良いが、今は事前予約が必要だったっけ。天気も良いし奥多摩に行こうか。いや、天気は大丈夫だろうか。…

リニューアルした杉並区中央図書館が素敵

コロナ禍の子供の運動会が終わった。密になる綱引きや大玉転がし、玉入れのような競技はなし。子供の学年の徒競走や出物の時間帯だけ親は見学し、昼休みは子供達は教室に戻ってお弁当を食べる。あっさりしたものだった。制限の中の数々の工夫が忍ばれる。コ…

読書備忘録:blink 第1感「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい

The Power of Thinking Without Thinking 原題の副題は「考えない思考力の威力」とでも訳すべきなのか。邦題の「「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」は商業的な惹句が過ぎると思うし本著の趣旨と異なる。最初の2秒のなんとなくの威力とそれを有意義に使…