島原の遊郭揚屋 きんせ旅館

随分と前から行ってみたかったきんせ旅館というカフェバーにようやく行くことができた。島原の遊郭街、新屋敷太夫町にあり、角屋という一般公開している元揚屋のすぐ近くにある。


推定築250年のかつての揚屋。予想以上に大きな建物で、一階がカフェバーになっている。薄暗く色味を帯びた照明に照らされた玄関から木の戸を押し開くと鹿鳴館を思わせるようなステンドグラスに囲まれた琥珀色の空間。ステンドグラスは雉や牡丹など和のモチーフで天井は折上格天井。明治、大正の頃の偽西洋様式か。





閑院宮載仁親王の書らしい。司馬遼太郎の著「坂の上の雲」で取り上げられるほど日露戦争で活躍し、後に元帥陸軍大将になった人である。明治天皇に負けず劣らずの美丈夫だったらしく髭の参謀総長と渾名されていたらしい。元揚屋に似合う。


ちなみに揚屋は最高位の花魁や太夫を呼び寄せて遊ぶもてなしのサロンのような場で、二流三流の遊女は来られなかった。親王が来るからには昔は格式の高い揚屋だったようだ。



好みの要素を抽出すると

  • 琥珀色の空間
  • 大きなスピーカーから流れる細やかで澄んだ音色
  • 大きなロックアイスで飲む上等な酒
  • 古めかしい照明


ほかに二三人、客がいた。皆、二十代、あるいは三十代前半の若い人達で言葉少なにまったりと浸っている。一人でカウンター席に逃げに来るのもいいな。いやー我が家を折上格天井にしたいもんだ。



きんせ旅館は現在のバー形態での営業は新しく、雑誌やインターネットを通じて知った若い人が多い。昔から現在まで年輩、爺様がずっと通っているような京都のバーはどこなのだろう。



そうか、「きんせ旅館」は「金清楼」だったのか。