猪の陶製ジビエ鍋

ロアン宮の装飾博物館で見つけた逸品。これを観れただけで入場した価値があった

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毛の流れまで表現された写実性に富んだ造形。舌がダラリと横から垂れ下がっている。

 

分類すると、巨大な陶鍋なのだと思う。耳を掴んで蓋を開けたら中から猪肉の煮込みが出てくるのか。それとも猪肉のハーブ焼きの肉片がゴロゴロと出てくるのか。ジビエの為のジビエ鍋。

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なんと断面まで忠実に再現。太い脊椎には骨髄。赤肉と脂肪。ここまでする必要があるのか、をここまでするから面白い。猪の断面がここまで三角形だとは知らなんだ。屠殺への理解が浅い。

 

 

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涙腺まで表現された、暗く褪せて死んだ目。

 

この鍋で出されたら、「わー 美味しそう!」となるのだろうか。野山を駆け回っていた猪を捕らえ、命を奪い、断首して、解体し、調理したことを改めて意識させられる。

 

食欲増進にはならないようにも思うが、「肉を食べるとはそういうことでしょ?」という問いにも開き直りにも思える。日本人が鯵の活け造りに食欲を失わないのと同じかもしれない。

 

陶磁器としてはボーンチャイナに全て色絵付けをしていると思われる。カオリンがなかなか採取できない欧州では白土に牛骨を混ぜるなどして独自の開発をしたのだそうだ。ボーンチャイナは中国伝来作陶のことだと思っていたが、骨を混ぜて中国陶器風にした欧州の作陶技法のことだとは。

 

制作者は「写実的に作ってやったぜ。うわ、リアル過ぎて気持ち悪い!とか言われんかな(ワクワク)」といった心境だったのではなかろうか。

 

同行した新入社員の若い女性に「これ、すごい悪趣味ですよねー」と同意を求めてるのかわからない感想を吐かれ、「え。。い、良いんじゃない?俺は好きだよ。」と濁しておいた。ストラスブール観光の最高潮がこの瞬間だとは言い出せなくなった。

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七面鳥なんかもあったけど、猪ほどの面白味はない。

 

ストラスブールの栄華

パリから2時間。手頃な郊外への遠足に最適な歴史都市、ストラスブール

 

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中世のストラスブール神聖ローマ帝国支配下にあり、アルザス地域がフランス領となった後もフランスによる併合を免れていたそうな。そしてルイ14世の治世となり領土拡大時にようやく併合される。

 

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それでもって併合後にフランスからやった来たのがロアン家という貴族でその後、フランス革命時に逃亡するまで司教の地位を長く長く独占し、ロアン宮という宮殿を建てて永らく贅を楽しんだわけだ。生臭坊主め。世の中は不公平だ。と言い掛かりをつけるのも、この手の贅沢が羨ましい訳ではなく、搾取された人達にその分だけ報われる何かがあったのかを考えると切なくなる。

 

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ロアン宮は考古学博物館、装飾博物館、そして美術館として使われている。装飾博物館は後にナポレオンに贈られた宮殿の内装がそのまま博物館となっている。

 

 

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白眉は美術館。一級品は全てルーブルとオルセーに集められてしまっているのかと思いきや、人気のないロアン宮の美術館にも見応えのある作品がわんさか。

 

これだけの歴史的できちょうな絵画を飾るのに、美術館の壁面は鮮やかな青や濃桃色でスタイリッシュ。写真撮影も可。日本の美術館が大抵は壁が白で撮影も不可なことと比較すると日本の美術館はなんて面白味に欠けるのだろうと感じてしまう。絵画の印象を左右しないように背景は無個性の白が良いという考えか。部屋ごとに発色の強い壁色にして絵画の個性や雰囲気を引き立てる努力を放棄しているとは言えないのか。

 

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ウィリアム・アドルフ・ブグローのこの作品は見たことはあるが、現物がロアン宮にあり、かつこんなにも巨大な絵だとは知らなんだ。

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ルーブルに行ったらもう、止まらんのだろうな。4時間でも6時間でも観ていられるのだろうな。

 

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ロワン宮を出れば15世紀から100年以上も世界で最も高い建築物の座にあったストラスブール大聖堂

 

職業選択の自由がない時代、石工の息子に生まれ、生涯を大聖堂建設に費やした人もいるのだろうね。142mという高さの尖塔を作るにあたり、何人が命を落としたのか。そういうのも殉死扱いになるのかね。くだらん。自由な職業に就ける現代を生きる身としてはもっと人生を楽しまにゃならんな、と思った次第。

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チェロの四重奏。辻演奏のレベルが高すぎて度肝を抜かれる。プロだよね。プロだと言ってくれ。裾野の広さ、層の厚さが感じられる。あの若さで激しくチェロを弾かれるとカッコ良い。

 

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眺める街並みの屋根は鋭角で、屋根裏小屋の窓がワクワク感をそそる。こんな家々の屋根を飛び回る猫はさぞ楽しかろう。

 

あれこれと楽しいストラスブール遠足だった。

機械仕掛けの天文時計

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ストラスブールで巨大な天文時計に出逢った。大聖堂の中に18mの高さで聳える。

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現在のものは三代目で1842年に完成したものだそうだが、閏年や分点だけでなく復活祭の日(「3月21日当日あるいはそれ以降の最初の暦上の満月を過ぎたあとの最初の日曜日)を計算できるようにもなっているのだという。下記写真がそれ。

 

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毎日毎時間、15分ごとにカラクリの骸骨が生の進行と死を暗示すべく登場する。時計は生まれてからの長さを測り、死への残り時間を減らしていく。

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こちらはロアン宮に収められている先代の天文時計の部品達。「機械仕掛け」というのは胸が踊り想像力が掻き立てられる言葉だ。

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機械仕掛けの雄鶏のバロック調の鶏冠が素晴らしい。こんな燻んだ風合いの造形を陶器で作ってみたくなる。

 

美食の都の社員食堂

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美食の国の企業にはなんとも豪華な社員食堂がある。

 

私:こんなパティシエが盛り付けるデザートがいつも食べれるのかい?

 

同僚:いやいや、いつもじゃないよ。週に2回ぐらい出張して来てるのかな?

 

私:。。。いつもだろ。

 

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ステーキやベジタリアンなど彩り豊か。サラダもチーズもパンナコッタもどれも美味しそう。

 

チリコンカルネ、焼魚のサラダと豪華なエクレアを選んだ。上記で6ユーロ。日本で食べる700円のランチの3倍は美味いわ。

 

昔と違って昼食からワインを飲む人は殆どいなくなったけれども、勤務時間中に飲むことは禁じられてはいないそうな。

 

 

ラファイエット

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世界中にどこでも売っている高級ブランドがギッシリ詰まったパリ随一の高級百貨店ラファイエット。私が買うものは何もない。しかしこのガラスドームは何度観ても素晴らしい。

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花の都の花たる所以というか、欧州的華やかさの先入観を結晶化したらこうなるのではないか、という絢爛さ。教会の中の装飾のようにゴテゴテと重くなるのと違い、鮮やかで彩り豊か。

 

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そんなガラスドームの下は高級化粧品がひしめき合うのだが、その中に突き抜けて高く、視線を集めるのがLANCOM。ARMANIでもなく、やはりフランスのシグニチャーブランドはLANCOMということなのだろうか。

 

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OはLANCOMのO。

 

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この高級ブランドたちの中心は自分だと主張せんばかりのアピール。

 

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ちなみにガラスドームの上は二重になっている。雹や何かが降ってきても、ステンドガラスドームは直接は被害を受けない。ここまで大掛かりにしないと実用性のある煌びやかなガラスドームは作れないのか。美への執念。

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パリで何しよう 持参土産、持ち帰り土産考

3月にフランス出張も3度目。さすがに寺院巡りもある程度したので、もう少し視野を広げていきたい。サブカルな店とか覗いてみたいが、誰に聞いたら良いのかもわからない。現代無名アーティストのイラストやなんか、どこに行ったら手に入るのだろう。ホテルを取ってくれたモンマルトル界隈だと観光客受けを狙ったようなものが多いし高い。

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我が家の庭も春めいてきたな。2週間も家を空けるのでベランダの植木は枯れないだろうか。

 

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矮小菖蒲ももう咲いた。

 

 

土産物
ジャックジュナンのマンゴーキャラメル、ストロベリーキャラメル、チョコ
 
ゴルゴンゾーラピカンテ、ブリー、ラクレット
 
エシレバター、ゲランド塩
 
アリアケのロブションによるブイヨン。
 
あとは豚と鴨のパテかな。
 
親父殿の祝いにツバ付きの小洒落た帽子やチョーカーなんぞを買いたい。
 
クリニャンクールの蚤の市に行きたいんだが、スリが多いというし、一人で行くのも抵抗があるな。完全個人旅行なら迷わず行くけれども。
 
フランスの素朴な民藝陶器を買ってみたい。磁器に華やかに絵付けしたような宮廷食器ものではなく、素朴な陶器が欲しい。
 
 
京都の画家の友人に頼まれたが前回買えなかった膠。ウサギの膠などがあるらしいが、平日しか店がやってなかった。
 
チーズ三昧。ブルーチーズ、カマンベールチーズ、ブリー、ラクレット。とりわけラクレットやハード系は日持ちがするので良い。モノプリで大方、購入するとして今回は特別に少しばかり良さげなブルーチーズもチーズ屋で買ってみようか。モンマルトルのFromagerie Quatrehommeを狙おう。
 
日本のアニメショップが集まる界隈に行けばフランス語版の漫画を買えるだろうか。「この世界の片隅で」が欲しい。あと「攻殻機動隊」とか。
 
なんか、日本人に通じるフランス人の歪んだ執着に溢れた面白いもん、どこかで見られないだろうか。
 
フランス人同僚への土産には以下を選出。
  1. 大勢へのバラマキには抹茶キットカット
  2. ヨックモック。定番バラマキ。20個入りで綺麗な和柄の缶箱入り
  3. ニッカ「フロムザバレル」ウィスキー。ISC2015で世界最高峰に評された日本の国産ウィスキー。しかもサントリー響の何分の1という脅威的なコストパフォーマンスというのはもてなしの話題になるのではないか。
  4. 絵柄の綺麗な瓦煎餅。バターや卵がふんだんに使われているのでお気に召すのではないかと期待。

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古くからの友人の結婚式で仙台の鮨に舌鼓

仙台の友人の結婚式へ。

 
大学1年次から数えてもう19年の付き合いになるわけか。

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自分とて、友人とて、公私において好調な時も不調な時もある。親兄弟でもないし、そんな何かを背負えるものでもないから近付き過ぎず、でも去らず。
 
酒に悪酔いした際の面倒くささや、時にはぞんざいなお互いの対応に気を悪くしつつも、親兄弟のそれを受け流すように。繊細さもなくナイーブではない友人関係というのが良い。
 
何かの時には変わらずに多少の助けになれる存在でありたいものだ。

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結婚式と披露宴は「向陽」という仙台駅からほど近い立派なホテルで行われた。

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ロビーに入るとこれでもかと露出の多い女性の石像、銅像が林立している。これが生身の肌色だと、一気に場末の秘宝館のようになってしまうと思う。

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肌色になってより写実性が増したとしてそれを芸術だと主張しても白々しくなるはずだ。石や銅ならばどんなに裸の女性を侍らせてもその空間は芸術的ということになり、格調があることになるのは奇妙だ。もし、像が肌色だったならばと見始めると面白い空間に見えてくる。何かもう少し着せてやれば良いのに。チラリズムの抑制の美の方が良いのに。

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今は遠くなってしまったバブルの時代を伝えるホテルだと思う。
 
結婚式の料理は豪華でどれも美味しかった。しかし胃と肝臓に鞭打って東北の海の幸をもう少し堪能したくて仙台駅の3階にある「北辰」という立食い鮨で摘んだ。

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「ばくらい」という赤ホヤと肝の軍艦巻き。ひんやりと冷え、ホヤの臭みは全然感じない。これは宮城ならではの寿司ネタに思う。

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「ドンコの肝載せ」。肝の濃厚さ。

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あいなめをポン酢で頂いたのもたまらんかった。
 
日帰りするのが口惜しい。再訪したい。平泉をまわったり松島や秋保の温泉にも浸かりたかった。また来るような予感がする。